原文
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昔、田舎わたらひしける人の子ども、井のもとに出いでて遊びけるを、
(昔、田舎まわりの行商などをしていた人の子供達は、井戸の辺りに出て遊んでいたが、)
おとなになりにければ、男も女も恥ぢかはしてありけれど、
(大人になったので、男も女も互いに恥ずかしがっていたけれど、)
男はこの女をこそ得めと思ふ。
(男はこの女こそを自分の妻にしたいと思った。)
女はこの男をと思ひつつ、親のあはすれども、聞かでなむありける。
(女もこの男を(夫にしたいと)思い続けて、親は(他の男と)結婚させようとするけれども、聞き入れないでいた。)
さて、この隣の男のもとより、かくなむ、
(そして、この隣の男のところから、このように(歌を送ってきた)、)
筒井筒 井筒にかけし まろがたけ 過ぎにけらしな 妹いも見ざるまに
(筒型の井戸の井筒と背比べをした私の背丈も(井筒の高さを)超えてしまったようだよ。いとしいあなたに会わないうちに。)
女、返し、
(女は、返歌を)
くらべこし 振り分け髪も 肩過ぎぬ 君ならずして たれか上あぐべき
((あなたと長さを)比べ合って来た私の振り分け髪も、肩よりも長くなりました。あなたではなくて、誰のためにこの髪を結い上げましょうか。(いえ、あなた以外いません。))
など言ひ言ひて、つひに本意のごとくあひにけり。
(などと、互いに歌の詠んで、とうとうかねてからの願い通り結婚した。)
(2)
さて、年ごろ経ふるほどに、女、親なく、頼りなくなるままに、
(そして、数年たつうちに、女は親を亡くし、生活の頼りとなるところを失うにつれて、)
もろともに言ふかひなくてあらむやはとて、
((男は、女と)一緒に、どうしようもなくみじめに暮らしていられようか(、いや、よくない、)と思って、)
河内の国高安の郡に、行き通ふ所出いで来きにけり。
(河内の国の高安の郡に、通って行く(女の)所ができてしまった。)
さりけれど、
(そうではあったけれど、)
このもとの女、悪しと思へるけしきもなくて、出だしやりければ、
(このもと
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