不穏な影
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新入部員勧誘週間も今日で四日目。
深紅は今日もため息をつきながら走り回っていた。
敢えて苦労を買って出る必要はない、つまり校庭を見回る必要はないだろうと初日で悟り、通報を受けたらその場に行くやり方をしている。
……にも関わらず、自分の行く先々でトラブルが起こりまくるのは何故なのか。
−−−初日にちょっと目立っちゃったのかもな……。
達也ほど大きな事件に関わってはいないが、初日は校庭を突っ切る巡回をしていたために多くの揉め事に巻き込まれた。
おまけに灼熱地獄や術式解体まで披露してしまったため、悪目立ちしたのだろう。
二科生であるという事もあり、毎日のように嫌がらせを受けていた。
嫌がらせというのは、やたらとトラブルに巻き込まれることだ。
自分の行く先々でどうでもいい揉め事が起こり、また無視するわけにもいかず突っ込むと、自分に向かって魔法が飛んでくるのだ。
……これを作為的だと感じない方がおかしい。
今も通報を受けてトラブルの現場に向かっているところだが、魔法が自分に向かって発動されるのが視えた。
ウンザリしながらも術式解体で魔法を吹き飛ばし、魔法の放たれた方角に目を向ける。
……毎日魔法を吹き飛ばすだけで放っておいたが、流石に深紅も我慢の限界だったのだ。
しかし相手も然る者で、彼女の視界に姿が入った瞬間ものすごい速さでその場を去っていった。
−−−これ以上の追跡は、時間の無駄にしかならないわね。
追いかけることを諦め、最初に向かっていた通報現場の方に足を向ける。
……彼女が得た犯人の手がかりは、細身の男子生徒だということと、右手首につけられた、赤と青の線で縁取られた白いリストバンドだけだった。
??????
「達也、深紅。今日も委員会か?」
帰り支度中の深紅と達也に、カバンを持ったレオが声をかけた。
「今日は非番だ。勧誘週間も終わったしな」
「やっとゆっくりできるよ……」
疲れ切った感を強く出す二人に、レオは思わず苦笑を浮かべた。
「大活躍だったもんなぁ」
「勘弁してよ」
「少しも嬉しくないな」
憮然とした顔でため息をつく二人に、レオは噴き出しそうになるのを必死で我慢する。
「今じゃ有名だぜ。
達也の方は、魔法を使わず並み居る魔法競技者を連覇した謎の一年生。
深紅の方は、二科生にして超高位魔法を操る紅姫ってな」
「えっ……」
レオの言葉に深紅は驚きを隠せず声をあげた。
「紅姫って……」
誰か不知火家に詳しい人でもいるのだろうか、と。
紅姫は、女性の火神子……つまり自分のことを指し示す言葉
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