Dr.くれはと一匹のトナカイ
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此処はロッキーマウンテンの頂上
ドラム王国を一望できる程の標高を誇る高山の一角である。
そんな中アキトとナミの2人はこの島の唯一の医者であるDr.くれはの居城へと難なく辿り着いていた。
城主が不在であったため現在彼らは城内へと足を踏み入れている。
幸いにも施錠はされておらず、容易に城内へと立ち入ることができた。
しかし、城内といえど冬島であるこの島の気候という名の猛威は変わらず2人を襲い続けている。
肌を凍えさせる程の寒気
今なお、大気を揺るがし続ける冷気
足を深く沈めさせ体力を奪う積雪の山
どれもこれも今のナミには毒な気候だ。
だが、2人にその自然環境が繰り出す猛威は届いてなどいなかった。
見れば2人の周りは一種の不可視の壁が存在し、周囲から乖離されていた。
冷気や雪がまるで意思を持つが如く独りでに避けているのである。
これも全てアキトの能力の恩恵に他ならない。
ジカジカの実の力により発生させた膜を周囲に張ることで今のナミの容態を脅かす全ての外敵を遮断しているのである。
今の彼女は本当に些細な事で命を落としかねない重体だ。
一瞬の気の緩みも許されない。
故に、細心の注意を持って彼女の傍にいる。
見ればナミは自身の腕の中で静かに眠っているが、呼吸は荒く、表情も決して芳しいものではない。
先程から身体越しに感じるナミの体温も徐々に上がってきている。
このままではナミの命が本当に危ない。
この城の家主であるDr.くれはは一向に自分たちの前にその姿を現さない。
「ヒ─ッヒッヒッヒッヒッヒッ!これはとんだ珍客だ!この猛吹雪の中、容易にこの城に辿り着く奴がいるとはね!!」
一旦、この山から下りようと考えたアキトの前に彼女が現れた。
傍には珍妙な帽子を被ったトナカイが控えている。
アキトは彼女こそがこの城の主であるDr.くれはだと確信し、真摯に頭を下げながら名乗りを上げる。
「お忙しい中、失礼します。俺はアキトいう者です」
「ほう、これはこれは真摯なことだね。それで、用件は何なんだい?」
「はい、本日は彼女を、いえ、ナミの病気を治してほしいのです」
「ほう、この小娘をね……」
Dr.くれは右手を顎に乗せ、アキトの腕の中に静かに眠るナミを見据える。
「成程ね、まあ構わないよ。それで、小僧……」
「……?」
「……若さの秘訣の話だったかい?」
彼女の突然のカミングアウトにアキトは思わず瞠目する。
「失礼ですが、Dr.くれはさんはおいくつなんですか?」
「私かい?私はまだまだピチピチの139歳だよ」
見た目にそぐわないご老体であることにアキトは驚きを隠せな
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