暁 〜小説投稿サイト〜
ランス 〜another story〜
第3章 リーザス陥落
第105話 怒りと笑み
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笑っている様にも見えた。

「………ならば、どう……する」

 ジルはゆっくりと歩み出した。一歩、一歩 確実にユーリに近づく

「…………我と……やる、か?」

 動き1つ1つが心臓を握りつぶされる様な感覚がする。
 これまでに幾度も魔人と相対してきた。多少なりとも、その手の圧力(プレッシャー)にも耐性が付いたと思ったのが自惚れだった。 

 いつもなら、かなみや志津香は勿論、軽口をいつも叩くロゼやミリもなにか口にする事だろうが、彼女達も金縛りにでもあったかの様に、口を縫い付けられたかの様に開く事が出来なかった。

「……判らぬ、のか。………我とやる事の意味が」

 敵の巨大さはこれまでの比じゃない。
 今までの前哨戦…… いや戦いすら始まってないと言える程のものだった。


「……さぁな」

 僅かに姿勢を低くし、柄を握る力も上げた。
 魔王を前にしても決して気圧されてない強靭な精神力だ。そして、それでいて周囲の状況の把握も忘れてはいない。自分の前にはジル、ノス…… そしてランスがいる。挟撃するにはもってこいだった。
 ランスの傍にはシィルとマルス、そしてリア。相手が悪過ぎるが それでも回復支援が出来る2人が傍にいる事を良しとした。
 何よりも……ランスは萎縮してなどいない。
 このジルを前にしても……前に出ていた。雰囲気を除けば絶世の美女と言える容姿だったからこそ、と言えるかもしれないが、それでも それがどれ程凄まじい事かはわかる。


――このランスと言う男が前にいるから、ユーリは今、少しでも安心して戦えるのかもしれない。


「ランス。そのカオスなら 魔人を、魔王も斬れるみたいだ。同時に封印もな。だったらさっさと活躍しろよ。じゃないと、オレが全部持っていくぞ」
「ふん!! ここで格好良く敵の親玉をやっつけて、きゃー! ランス様すてき〜 抱いて〜〜! と呼ばれるのはオレ様だ。確かに極上の女だが、元気が有り余ってるみたいだからな。ちょいと大人しくさせてからゆっくり セックスだ!」

 軽口を叩くが、それでも決してジルから視線を外さない。
 その後ろにはノスも控えているのだ。


「……………ノス」


 ここで先に動いたのはジルだった。
 嵐の前の静けさ、とでもいうのだろうか ユーリやランスの2人の会話以外、殆ど無音。荒い吐息の音、邪悪な気配だけが支配するこの空間で、再びジルの声が響く。
 それだけで、常人であれば心臓が止まりそうになるが、ここに集った戦士達はそれを堪えた。

「はっ。此処におりまする」

 沸き起こる殺意を、ユーリに向けられた明確な殺意を懸命に押し殺すノス。その気配だけで常人であれば 即座に気絶をしてしまいそうな殺気もジルを前に霧散した。

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