暁 〜小説投稿サイト〜
嗤うせぇるすガキども
戦車は愛と正義を否定する 後編
[4/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初
で急発進した。
 戦車では今まで経験したことのない加速と速度。
 玖波はすっかり自己陶酔している。



 最初に彼らの前に現れたのは、ダークスーツにサングラス。
 伊達に鍛えているわけではなさそうなSPか自衛隊の特戦群にでも所属していそうな男。

『まず最初は、あの「誰も逃がさない男」だ』

 T号戦車C型は、装軌車にあるまじき速度でその男に迫る。
 驚いた男は、確かに尋常ではない速度で逃げる。
 しかし、誰も逃がさない男が、今度は逃げられない立場。
 ものの1分で戦車はその男の背中を突き飛ばし、履帯で両断した。



 さらに進むと、今度は杖代わりの手押し車にすがっている、
よろよろと歩くのがやっとの老婆が現れる。

『今度はあれだ。
 まさか「仏心」など起こさないだろうね』
「うるさい!
 戦車に乗ると決めたときから、人の心などとっくに捨てた!」
『重畳だ』

 老婆は、驚いた顔のまま、身動きもできず、
手押し車ごとポキポキと乾いた音を立てて挽き潰される。

『わかるな? これが戦争だ』
「僕に説教するな。三下悪魔が」
『けっこうだ』



 T号戦車C型は、また次の目標を見つける。
 今度は3歳ぐらいの女児を連れた母親だった。
 子どもを抱えて逃げようとするが、T号C型の快速にかなうはずもない。
 母親は子どもを横に放り投げ、前部装甲にはね飛ばされる。
 胴体がありえない方向にねじ曲がって死んでいる。
 子どもはいきなり投げ出され、座り込んだまま号泣している。

『ほら、子どもだけ遺しちゃ可哀想だろ』
「あたりまえだ。母親の後を追わせてやる、やってやる!」

 玖波は、もちろん正確に機械のようにやってのけた。
 泣いていた女児はいきなり後ろから履帯に踏みつけられ、風船のように弾けた。
 真っ赤な泥濘の中には、かろうじて4本の手足だけが残っていた。

「ふははははははは!」

 哄笑する玖波は、もはや本職の悪魔以上に悪魔的だ。



 さらに進むT号C型の前に、マイバッハのリムジンが現れる。
 うしろを見せて逃げるようだ。

『さっさと追え。またしくじりたいのか?』
「黙れ!」

 玖波はアクセル全開で追い回す。
 リムジンは必死に逃げ道を探しているようだが、先が詰まっているのか速度が落ちる。

「あれ? 家のリムジンか?」

 玖波はナンバーを見る。
 まちがいなく、彼の母のショーファードリブンだ。
 そして後部座席で蒼白になっているのは、彼の母だ。

『ここで止まるのか? 退けば道はなくなるぞ』
「あーっはっはっは! 誰が引くものか!」

 T号C型は速度を落とさず、マイバッハに乗り上げる。
 さしも
[8]前話 [1] [9] 最後 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ