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嗤うせぇるすガキども
戦車は愛と正義を否定する 後編
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ると思うらしく、あいかわらず尊大なままだ。
 悪魔少年、陽炎は目を閉じてかぶりを振る。

『ちがうよ。愛と正義を否定して冷酷無惨になることだ。
 いいかい? 戦車って装甲の中から生身の兵士や無力な女子どもを殺戮するのが仕事だよ。それをあやつる人間が人の情なんか持っていてはならないんだよ。
 そんな人の情なんてものを捨てきれなかったから、この世界の男たちは女たちの言うままに、装甲戦闘車両を手放したんだ。
 当然君は、「愛と正義」なんてものを否定する必要がある』

 おそらくは詭弁なのだろう。悪魔が口にするのだから。
 それは彼に、悪魔になれと言うに等しい。
 だが、この世界の住民たちが思うとおり、この世界で戦車に乗る男は悪魔より下劣な存在だ。なぜならそれは、この世界の神々が定めたまいしことなのだから。

「承ろう。この僕に「逃げる」という道はない」
『二言はないね』

 悪魔少年の身体から、暗闇が吹き出す。
 あっというまに聖グロリアーナ艦も、その上のビクトリアンホールも闇に消える。



 彼らの前には、1両の戦車、いや、豆戦車があった。

『知っているだろう? T号戦車C型だ』

 玖波は、悪魔少年の問いに黙ったままうなずく。

『これは最高時速、路上で79km/hというプロトタイプ』
「知っているさ。たとえ対戦車銃しかないこの戦車でも、僕なら上手く使いこなす。
 いや、僕にしか使えないだろう。
 で、この戦車でティーガーUとでも戦えと?」

 また悪魔少年はかぶりを振る。
 それでは愛と正義の否定にならないから。

『君にやって欲しいことは、この戦車に乗って走り、
 これから進路に現れる「人間」を一人残らずひき殺してみせることだ。
 この戦車のスピードなら、君であっても逃げることはできないだろう』
「いや、僕なら逃げる自信はある。
 まあいい。そのくらいのことで僕が戦車乗りになれるなら、やってやる」

 悪魔少年は黙って、「T号戦車C型」の操縦手席を指し示す。
「乗れ」というのだ。
 玖波は操縦手席ハッチから、見せつけるようにひらりと戦車に乗りこむ。
 悪魔少年は砲塔の半月型のハッチを開けて、銃手席に着いた。

 果てしない暗闇の中でT号戦車C型のボッシュライトが点灯する。
 ハーフトラックのエンジンをボアアップしたHL45P直列6気筒エンジンがうなりを上げる。

『もう知っているだろうが、こいつのステアリングはフランス発祥、シャーマンやハノマークと同じクレトラックだ』
「つまりこいつは戦場のスポーツカーだな」
『飲み込みが早いと助かる。戦車行進(パンツァー・マールシェ)』
「うるさい。僕に命令できるのは僕だけだ」

 T号戦車C型は、フルスロットル
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