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嗤うせぇるすガキども
戦車は愛と正義を否定する 中編
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ゃない。しかし奴らの雄叫びは、吶喊は止まない。
 仲間が殺されても、なお走り続ける。いくら殺されても、こいつらは戦いをやめない。
 倒れても、息の根が止まるまでライフルの引き金を引き、手榴弾を投げてくる。
 いったいこいつらは、何のために戦っているというのだ!
 戦車の正面で血煙を上げて倒される連中を尻目に、バズーカを抱えた別な集団が回り込み、ロケット弾を5発も10発もティーガーに浴びせる。
 ティーガーの重い砲塔が宙を舞う。
 無敵戦車の誉れ高いティーガーが、装甲部隊最強の猛者たちが、無惨に倒されていく。
 奴らはもう目と鼻の先だ。小鬼どもは戦車が動き始めたのにも構わずよじ登る。
 機銃弾が尽きた車長は9mm拳銃を構えて防戦するがすぐに取り囲まれ、銃剣でグサグサとあたりかまわず突き刺され、黒いパンツァージャケットを真っ赤に染めた、ただの肉塊と化す。
 Sマインを食らって死んだ仲間を盾にして、ゴブリンは開いたハッチから手榴弾を投げ込む。
 手榴弾で戦車を倒すなんて、玖波は戦争映画だけの話だと思っていた。

 その時、玖波の隣のティーガーの車長がいきなりのけぞる。
 額のど真ん中に、銃弾の貫通した穴を開けて。
 リーダーらしいゴブリンの一匹が、照準眼鏡の付いたライフルを構えている。
 狙撃兵か? ちがう。ライフルに他の連中と同じ長い銃剣を着けている。
 そいつは他のゴブリン以上に敏捷に動き、ドイツ兵に応戦のいとまも与えず、次々と銃剣のサビに変え、かと思えば何百メートルかなたの指揮官をヘッドショットで討ち取る。
 そいつに気を取られているスキに、別なゴブリンが玖波の目のまえにぬっと現れる。
 ある有名な何十年も続いたドラマで子役としてデビューした「○○○○○○」のような顔の浅黒い肌のゴブリンが、無邪気な笑顔で玖波を見ている。
 一瞬あっけにとられる玖波。

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 しかし玖波がワルサーを引き抜くより早く、○○○○○○モドキのジャガイモは玖波の口に破片手榴弾を拳で押し込んで来た。
 玖波の前歯が全部折れても殴り続け、ついに玖波のあごが外れる。
 ○○○○○○モドキは無邪気に笑いながら、手榴弾のピンを抜き、銃の台尻で玖波の頭を人間業でない力で何回も殴りつける。
 キューポラから車内に手榴弾を咥えたまま転落する玖波。
 玖波は必死に手榴弾をつかみだそうともがくが、どうしても手榴弾が口から外れてくれない。
 6秒の時が非情に刻まれ、導火線が燃え尽きると同時に炸薬に火をつける。
 玖波の口の中で手榴弾が炸裂し、彼の頭部を頭蓋骨ごと粉砕する。
 頭を失った玖波の身体は、2本の頸動脈から赤い霧をまき散らして踊り、むきだしになった声帯だけが「ぼくはせかいいち。せかいいち」とうわごとをくりかえす。
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