暁 〜小説投稿サイト〜
嗤うせぇるすガキども
これが漢の戦車道 E
[9/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
こいつらが乗っているのは、軽い方。それがまるでサッカー選手のように走り回っている。

(何が「標準的中戦車」だ! 標準は標準でも「戦後」の標準じゃねえか。
 どう走っても頭を押さえ続けられる。速すぎる。後ろを取るなんざ無理だ!)

 それでも戦争親父は、活路を求めて必死に頭を巡らせる。





「西住さん。敵も上手いな。W号なら負けていたかもしれない」

 デカい頭にやせぎすの身体。遠くから見たらマッチ棒のように見えるだろうドライバーが口にしたのはそれだけだった。
 ただの二重差動式操向装置が、ラリーカーのステアリングになったかのように反応する。
 といっても向き変えそのものはエンジンパワーで行い、ハンドルの入力はその度合いを決めるだけのものだから、ブレーキレバーでもある操向レバーより軽い。
 前進8速後進4速のセミオートマチックトランスミッションのシフトレバーが動き続ける。
 止まることがないかのように。

「しかしアクセルワークが難しい。ラフに踏んだら飛び出しかねん。
 キャブではなくインジェクションというのは、こんなに反応がいいのか?」

 この戦車のエンジンの気化器は、キャブレターと呼ばれる霧吹きではなく、アクセル開度にダイレクトに反応して適度の燃料を吹きかける「燃料噴射装置」だ。
 マッチ棒が少佐カットにいわれたことはただ一つ。
 絶対に敵の射界に戦車を入れないこと。
 マッチ棒は、それを自分の判断だけで実行している。
 少佐カットがやっているのは、ガンナーへの指示だけだ。

「みほさん。もう5発も外してしまいました」
「華さん。仕方ありません、相手は男性です。
 私も男性の反射神経や集中力には、驚いています。
 そういう単一能力は、やはり女性はかなわない」

 というが、彼女たちの砲撃は、ことごとく至近弾になっている。
 kwk44/1戦車砲は、同クラスの75mm砲に比べて軽く頑丈だ。後座長も短い。
 すばやく狙いを決められ、しかも射撃時のぶれが少ない。

「西住殿ぉ。こちらは静止射撃をした方がいいんじゃないでしょうか?」

 いまは手持ちぶさたになっているくせ毛のローダーがぼやいている。

「優花里さん。止まればあっというまに後ろを取られるわ。
 麻子さんが相手の進路を常に邪魔しているから、正面を向け続けられるけど。
 それをしないと、決勝戦の逆のことになりかねない」

 それは彼女たちが、戦車道全国高校生大会決勝戦で捨て身の螺旋状スピンターンを仕掛け、ティーガー重戦車の後ろを取って、紙一重で勝ったことをいっているのだった。
 もし彼らと戦車が同じなら、負けるのは自分たちだと少佐カットは自覚していた。






 一方、悪魔チームと男子
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ