第九幕その十
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「桜はあるの」
「植えたんだ」
「そうなの、本当にね」
笑顔で言った恵梨香でした。
「桜がないと春じゃないから」
「日本人の感覚だと」
「一年もはじまらない」
「そう思ってなんだ」
「桜はあるの」
「それで春にはだね」
「沖縄にも咲くの。ただ暑いから」
それでというのです。
「一番最初に咲くの。それで沖縄から北に上がっていくの」
「桜が咲いていくんだ」
「それで最後は北海道なの」
「一番寒いからだね」
「最後に咲くのよ」
「そうなっているんだ」
「それがテレビでも言われるの」
放送されるというのです。
「それがないとね」
「日本では春じゃないんだ」
「そうなの。面白いでしょ」
「確かにね。というか桜がないと」
「日本人はね」
恵梨香はトトに答えました。
「そんな気がしないの」
「どうしてもだね」
「春って気がしないのよ」
「つまり桜を見て春と思うのが日本人かな」
「そう思ってくれてもいいわ」
「だから沖縄も日本なんだね」
トトはこう考えました。
「つまりは」
「そうなるわね」
「成程ね。桜は欠かせないお花なんだ」
「沖縄にもあって」
「この山にもあるし」
丁度目の前にありました、それも沢山。
「ハブ君やヒャン君も見て楽しんでいるんだろうね」
「そうでしょうね」
「恵梨香も好きだよね」
「お花で一番好きよ」
にこりと笑ってです、恵梨香はトトに答えました。
「何といってもね」
「やっぱりね」
「毎年春に見るのが楽しみよ」
「そこまで好きなんだ」
「ずっと見ていたいけれど」
一年中というのです。
「それでも春の一時にしか見られない」
「そこに風情があるかな」
「そうかも知れないわね」
「そうも思うんだ」
「そうだけれど」
「そこは難しいね」
トトは恵梨香の右隣を歩きつつ応えました、トトの右隣にはいつも通りドロシーがいます。
「一年中見たい、けれど」
「一時しか見られないからね」
「風情もあるね」
「そうよね」
「そこは本当に難しいね」
「一番好きなお花だからずっと見たいの」
この気持ちは強いです、確かに。
「けれどね」
「そう思うのと一緒に」
「一時だけ見られるからね」
「風情もあるんだね」
「そうも思うから不思議だわ、他のお花にはこんなこと想わないのに」
それでもというのです。
「桜にはそうなの」
「それだけ思い入れがあるということね」
ドロシーが言ってきました。
「恵梨香は」
「桜にですね」
「何も思わないお花はね」
それならというのです。
「そこまであれこれ思わないでしょ」
「そうなりますね」
「本当に好きだからよ」
「ずっと見てみたいと思いながら」
「一時でもとね」
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ