第三章
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「日本のね」
「これがですか」
「うん、そうだよ」
「あの、これは」
とてもとだ、トムリンソンは宮崎に返した。
「ビーフシチューには」
「見えないよね」
「とても。デミグラスソースではなくてです」
「お醤油と味醂だしね」
「どちらも日本の素敵な調味料ですが」
噂には聞いていて味わって感激した程だ、醤油は中国でもそうだった。
「ですが」
「いやいや、本当にこれがね」
「本気で、ですか」
「これは日本のビーフシチューなんだよ」
自分の前にもあるその料理を前に笑顔で言う宮崎だった。
「本当にね」
「嘘ではないのですか」
「実はこれイギリス海軍にも関係があってね」
「我が国の」
「午前中にお話したね」
彼等にというのだ。
「縁があるんだ」
「そうなのですか」
「日本の東郷平八郎元帥がイギリスに留学していたんだけれど」
「ああ、日本海海戦の名将ですね」
「その時にビーフシチューを食べてね」
そうしてというのだ。
「それで日本に帰ってビーフシチューを食べたくなって、一説には体調を崩していて給養の水兵さんが気を利かして作ったとも言われているけれど」
「ビーフシチューを」
「それで東郷さんは水兵さんに食材をお話したけれど」
「そういえば食材は」
「同じだね」
「はい」110
ジャガイモに肉、人参、玉葱とどれもビーフシチューの食材だ。糸蒟蒻はあえてスルーして言っている。
「どれも」
「それだけ聞いてね」
「後は調味料は」
「調味料は聞いてなかったか言ってなかったか」
それでというのだ。
「水兵さんは日本の調味料を使って作ったんだ」
「お醤油や味醂を」
「そして出来たのがこれなんだ」
今自分達の目の前にある料理だというのだ。
「日本のビーフシチュー、肉じゃがだよ」
「いや、凄いお話ですね」
トムリンソンはここまで聞いて宮崎に絶句した様に述べた。
「それはまた」
「どうしてこうなったっていうかね」
「不思議です」
「しかもね」
「しかも?」
「食べてみたらいいよ」
その肉じゃがをというのだ。
「そうすればね」
「では」
トムリンソンは宮崎の言葉に頷きイギリスの食べる前の礼をした、宮崎は日本のものだ。それぞれそうしてからだった。
二人共肉じゃがを食べた、トムリンソンはジャガイモと肉を一緒に食べてから宮崎に対して言った。
「美味しいです」
「そうだよね、日本のビーフシチューも」
「はい、素敵な味です。東郷元帥の水兵さんに感謝です」
最初に作った彼にというのだ、彼は宮崎ににこりと笑って述べた。
彼は日本にいる間この肉じゃがをよく食べた、そうしてイギリスに帰って友人達に振舞ってみた。すると皆それをビーフシチューとは思わなかった。だがそ
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