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Raison d'etre
二章 ペンフィールドのホムンクルス
14話 白崎凛(2)
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 第六小隊長、白崎凛がはじめに感じたのは、冷たいアスファルトの感触だった。
 気を失っていたことに気づくと、凛はすぐに立ち上がった。
 強い目眩を感じたが、彼女はそれを無視して小銃を構え、周囲を見渡した。
 辺り一面が紫の霧に覆われ、見通しが悪い。
 僅か10メートル先さえも霞んで見えない状況だった。
 凛はゆっくりと足音を殺し、近くの民家の塀まで移動して、そこに背中を預けた。
 耳を澄ますも、周囲から聞こえるものは何もない。完全な静寂が辺りを支配していた。
 どうやらあのホモンクルスと呼ばれた亡霊の追撃はなさそうだった。
 背中に背負った機械翼を手探りで確認する。特に大きな損傷は見られない。
 試しに機械翼にESPエネルギーを送った。しかし、何かに阻害されているかのように、機械翼は沈黙を続ける。
 凛は小さく舌打ちした。
 ――まんまと誘いこまれてしまった。
 そもそも、中隊が到着するまでホムンクルスが高梨市の上空でじっと待機していた時点で気付くべきだったのだ。
 今思えば、あれはどう考えても罠ではないか。無能な司令官め、と内心毒づく。
 凛は小銃を構え、ゆっくりと塀伝いに移動し、手短な庭に入り込んだ。
 そのまま民家の窓を銃床で叩き割り、強引に身を滑り込ませる。
 どうやら、そこはリビングのようだった。小銃を油断なく構え、順番に部屋の内部をクリアリングしていく。
 静寂の中、自分の息遣いと足音が妙に大きく聞こえた。
 一階に誰もいない事を確認し、凛は迷った後、二階も確認する事にした。
 薄暗い階段をゆっくりと上る。
 やはり、人の気配はない。
 凛は油断なく小銃を構えながら、階段近くのドアをそっと開いた。
 メンテナンスをしていないせいか、ヒンジの部分から高い金属音が上がった。
 中を覗き込むと、子ども部屋のようだった。勉強机が二つ並び、二段ベッドが置かれている。
 誰もいない事を確認し、次の部屋のドアを開ける。
 倉庫のようになっていて、乱雑に物が積まれていた。
 どこにも死体がなかった事に安堵する。
 凛は二階の廊下に土足のまま座り込んだ。
 これで、ひとまず襲撃者のルートを階段に限定することができる。
 深呼吸して息を落ち着かせる。
 考えろ、と凛は自分に言い聞かせた。
 何故、ホムンクルスは殺傷能力のない攻撃手段をとった?
 ――この霧の中に落とす為だ。奴はわざわざこの霧の上空で待ち伏せをしていた。ホムンクルスの行動と目的は一貫しているように見える。
 何故、亡霊は私たちを霧の中に落とした?
 ――それが亡霊の戦術目的、または戦略目的を満たすもの、あるいは満たす為に必要な事だったからだ。少なくとも、亡霊の戦術目的
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