二章 ペンフィールドのホムンクルス
13話 望月麗(5)
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──ESPは攻撃手段以外にも情報体としての特性を持ちます。
脳裏に雪の言葉が浮かぶ。
「ごめん、我慢して」
優はありったけのESPエネルギーを少女の機械翼にぶつけた。
彼女の機械翼が優の膨大なESPエネルギーに感応し、凄まじい速度で上空に打ち上げられていく。
乱暴なやり方だったが、少なくとも安全圏まで投げ出す事は出来た。
振り返ると、上から霧が迫っていた。
高度を落として、失速した速度を稼いでいく。
周囲を見渡すと、逃げ遅れたらしい識別灯が5つあった。
──間に合わない。
そう悟っても、優は速度を緩めようとはしなかった。
「桜井! どこ!」
不意に前方から京子の肉声が響いた。
見ると、安全圏らしき所に京子らしき識別灯が見えた。
京子の位置はまだ安全だ、と判断して真下にいる少女の元へ加速する。
力一杯腕を伸ばし、その機械翼にESPエネルギーを送る。
優のESPエネルギーを通した命令が彼女の機械翼に伝わり、逃げ遅れていた少女が一気に加速して安全圏へ弾かれていく。
次。
逃げ遅れている少女たちを探す。
既に数人がエネルギー体に呑まれてはじめていた。
『優くん、何をしているの! 後退しなさい』
奈々の命令。
だが、それでも優は迷わず、エネルギー体に突入を開始した。
視界が紫一色に染まる。
途端、機械翼が不気味な音を立てて振動し始めた。
機械翼へのESPエネルギー供給が、辺りに蔓延するエネルギー体によって阻害されているのだろう。
霧で塞がれた視界の一角に何かがきらめく。
識別灯の明かりだとすぐに理解し、速度をあげる。機械翼が悲鳴をあげるように軋んだ。
識別灯の持ち主──望月麗の姿が霧の間に隠れて垣間見えた。
「麗ちゃん!」
腕を伸ばす。
「先輩!」
優の存在に気付いた麗が驚いたような顔をして、優に向かって手を向けた。
二人の手が絡まり合い、離れないよう力強く握る。
麗を霧から吹き飛ばし、次の救出に向かおうとした時、機械翼が遂に機能を停止させた。
「やば──」
咄嗟にESPエネルギーで光翼を作り出す。
巨大な翼が優と麗を包み込んだ。
しかし、機械翼と同様に揚力が得られない。
周囲のエネルギー体から何らかの妨害を受けているらしかった。
「先輩! 地面が!」
麗の声にハッとする。
既に陸地が目の前まで迫っていた。
咄嗟にESPエネルギーを練り、衝撃を殺す為に下方に放つ。
直後、凄まじい落下音が誰もいない霧の中に木霊した。
◇◆◇
奈々は機動ヘリから送られ来る映像に叫び続けていた。
「後退せよ。繰り返す。
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