二章 ペンフィールドのホムンクルス
5話 望月麗
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京子が悪戯っぽく笑う。
優は返答に窮して、それなら良いけど、と曖昧に濁した。
「てかさ、桜井って年下のほうが良いの? 年上受けしそうな感じだけど」
「いや……あんまり年齢に拘りとかないよ。あ、望月さんってやっぱり年下だったの?」
「うん。確か二つ下だったから中二じゃない?」
中二、という言葉が妙に印象的だった。
通常、特殊戦術中隊に入隊した時点で学業からは離れる事になる。しかし、義務教育である中学校を辞めることはできない為、便宜上まだ彼女は学生なのだろう。
「そういえば、詩織ちゃんも一個下だっけ。後輩たちは積極的だねぇ。華も頑張りなさいよ」
「ええっ!? わ、わたしは別に――」
京子の言葉に華が顔を真っ赤にして慌てふためく。
優は苦笑して、すっかり冷めた親子丼を口に運んだ。
◇◆◇
夕食を終えた後、優たち四人は寮棟に繋がる通路に向かおうと、一階ロビーを通った。
その時、警備員と年輩の女性が入り口で言い争っているのが見えた。
珍しい光景に自然と足が止まる。女性は「中に入れろ」と騒いでいて、警備員は三人がかりでそれを押さえ込んでいた。
「なに、あれ?」
不思議そうにその光景を見つめながら尋ねると、京子が呆れたような声で答えた。
「第四小隊の……誰だっけ。誰かの母親らしいよ。ああやって娘に面会させろって頻繁に乗り込んでくるわけ。ちょっとした名物みたいなもんだよ」
「面会? ああ、既に面会時間が終わってるのにゴネてるとか?」
何気なく振り返ると、優以外の三人は困ったように顔を見合わせていた。
その様子に思わず首を傾げる。
「ううん……面会は夜九時までは自由なんだけど、娘さんの方が会いたくないって言ってて……」
華が言いづらそうに答える。優が不思議そうな顔をすると、愛が補足するように呟いた。
「……昔、虐待があった。児童相談所が何度か動いて、接近禁止命令が出てる」
「――え?」
「あー、桜井って今まで面会に来てる家族さんとか見た事ないでしょ? 何でか知ってる?」
京子が迷ったように、目を逸らしながら言う。珍しく歯切れの悪い京子に、優は戸惑いの視線を投げ掛けた。
確かに、面会に来ている家族を見た記憶がない。あまり気にしたことがなかった。
「え、うん、確かに見た事ないけど。山奥の辺鄙なところにあるからじゃないの?」
短い沈黙が流れた。
嫌な間だった。
それだけで、良からぬ理由がある事を察するには十分だった。
京子がわざとらしく明るい声で説明を始める。まるで大した事がないように。
「世間じゃさ、ESP能力者の共通点って、全員が女っていうくらいしか認識されてないよね。実はさ、公式には発表されてない
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