暁 〜小説投稿サイト〜
Raison d'etre
二章 ペンフィールドのホムンクルス
3話 姫野雪
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「広瀬さんとコンタクトを取りたいなら、ESPエネルギーをもっと上手く扱う事が出来るようになりなさい。ESPエネルギーは攻撃手段以外にも情報体としての特性を持ちます。正しくは、そちらが本質なのですけれどね」
 話が急に戻った。唐突な変化に軽く混乱する。
「情報体……?」
「そう。あなたはそれを既に知っているはず」
 優の脳裏にイーグルの放った追尾弾が浮かんだ。
 ――ESPエネルギーは情報体としての特性を持つ。
 いくつもの疑問が濁流のように溢れ、雪に訊ねようとした時、彼女はくるりと背を向けた。
「あ、あの」
 呼び止めると、雪は一度だけ振り返り、柔らかい微笑を浮かべた。そして、滑るようにすうっと出入り口へ消えていく。
 いつのまにか、優はその様子に見惚れていた。
 ――不思議な人だなぁ。
 そう思いながら、自身の右手を見つめた。表面を覆うようにして光り輝くESPエネルギー。
 ESPエネルギーの扱いに上手くなれ、と雪は言った。不思議とデタラメな言葉ではないように思えた。何か確信めいた言い方だった。
 強く風が吹き上げる。優は静かにESPエネルギーを纏い始めた。
 自身の手を見る。練り上げたESPエネルギーによって翡翠の光が溢れている。
 現時点で、優は攻撃以外にESPエネルギーによる光翼を作り出す事が出来る。攻撃の為の単純なエネルギーの出力ではなく、持続的に揚力を発生させるエネルギーのコントロール。
 小銃も機械翼も、ESPエネルギーに指向性を与える為の補助具でしかない。
 本来のESPエネルギーはもっと自由に使えるはずだった。なのに、誰もそれを体得できていないだけなのではないか、と思う。
 練り上げたESPエネルギーを、光翼のように指先に維持させるように意識する。何かを具現化させようと集中する。
 指先に集まったESPエネルギーがすぐに霧散し、大気中に溶けていく。
 優は諦めず、もう一度ESPエネルギーを練り始めた。
 今度は指先ではなく背中にESPエネルギーを集中させて、以前のような光翼を作り出す。
 背中から広がった翡翠の光が、優を包み込んだ。
 やはり、小銃から撃ち出しているようなESPエネルギーとは違う。この光は攻撃的な特性を保持していない。
 これと同様のものを、背中以外から出力しようと試みる。
 しかし、何度挑戦しても指先に集中したESPエネルギーは、蒸発するように一瞬で霧散してしまう。
 原因を考える。それらしい理屈が一つだけ頭に浮かんだ。
 日常的に機械翼を使用しているため、感覚的にESPエネルギーを用いて空を飛ぶ、という認識と感覚が既に頭にあった為だろうか。
 必要なのはイメージ、あるいは自己の認識、経験。そのどれか、あるいは全
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