一章 救世主
16話 佐藤詩織(3)
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がるかもしれない。話した内容を全て教えてくれないかな?」
「話していません。何も、です。急な戦闘で、話せる雰囲気ではありませんでした」
優が繰り返す。上田は粘り強く訊ねた。
「じゃあ、何故襲われたのか、も分からずに戦闘を?」
「はい。正当防衛でした。拘束された状態から逃げる時も相手の不意をついたので、本当に話す機会はありませんでした」
詩織は気付いた。これは尋問だ。優は何かを疑われている。
「そうそう、その逃げる時に君は無数のESPエネルギーを全包囲に放ったよね? それが軍のESPエネルギー探知機を結果的に無力化してしまったんだよ。君はこれを予想したかい?」
優が黙る。上田中将は口調こそ子どもを諭すような優しさを保っていたが、その目は一切笑っていなかった。
「それについては謝罪します。しかし、ESP能力者もESPエネルギーを感知することが可能です。追撃を避ける為には、あの撹乱は必要不可欠でした」
「ふむ。では、その行為が軍のESPエネルギー探知機をも撹乱することは予想できたんだね?」
中将が繰り返し問う。
詩織には一連のやりとりの意味が分からなかった。一体、中将はどういう答えを求めているのだろう。上田中将は優の責任を問いたいのだろうか?
「はい。予想はしました」
「では、少し待てば軍が支援行動を取る、とも予想できた訳だ。君が気絶して拘束された時点で、相手は君に殺意を持っていない、と判断できる。しかし、君は軍の支援を期待して待機しようとはしなかった。何故だ?」
中将の言葉には批判が含まれていた。
詩織は扉に目をやった。酷く場違いな気がした。しかし、どのタイミングで出ていけばいいのか分からなかった。
「僕、いえ、私が遠方でESPエネルギーを感知したからです。同僚が苦戦しているのを感じ、軍の支援を期待している余裕がないと判断しました」
中将は何かを考えるかのように黙りこんだ。部屋に沈黙がおちる。
詩織は居心地の悪さに目を伏せた。優も、緊張した様子で中将を見ている。
「そうか」
不意に、上田中将が立ち上がった。
「悪かったね。参考になったよ」
そう言って、扉に歩を進める。しかし、詩織が安堵の息を吐いた瞬間、中将の足が止まった。
「最後の質問だ。君は何者であるべきだと思う?」
詩織は質問の意味が分からず、首を傾けた。反対に、優は質問から何かの意図を読み取ったように、真剣な顔で答えた。
「特殊戦術中隊に所属する一兵士です」
上田中将は何も言わず、扉を開けた。上田中将の姿が消え、扉が静かに閉まる。
詩織は優を見た。優も詩織を見ていた。優が苦笑する。
「何だったんだろうね?」
詩織は答えに困って何も言えなかった。優もそれを感じたの
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