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Raison d'etre
一章 救世主
13話 広瀬理沙(3)
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 篠原華は、機械翼の生みだす揚力によって夕暮れの空を飛行しながら、背後をチラりと振り返った。五人の小隊長が一定距離を保って連いてきている。そして、洋上には哨戒艦艇みなみの影。
 全小隊長が一度に出るのは、華が知っている限りこれで二度目だった。通常、連戦や本部の防御を考慮して、小隊長のうち最低一人は本部に残る。つまり、全小隊長が出るのは他では手が負えないと判断された時だけだ。自然と小銃を握る手に力が籠る。
『警戒区域に突入。各自兵装を確認』
 通信機から届く奈々の命令に、小隊長たちは一斉に小銃の安全装置を解除した。そしてマニュアル通りに連結ベルト、機械翼、識別信号に異常がないかを確認していく。
 第五小隊長の進藤咲しんどう さきが狙撃銃を構え、光学照準器を覗きこむのが華の視界の隅に映った。
『……前方海面付近に亡霊です』
 通信機から咲のか弱い声が届く。華はすぐに視線を落とし、海面付近を注視した。一つの影が見える。影はみるみるうちに大きくなり、次第にその姿がはっきりと視認できるほどになった。
「鳥……?」
 華の口から、ぽつりと呟きが漏れる。
 敵は鳥のような形をした、大型の亡霊だった。その美しいフォルムは遠目からでは戦闘機のようにも見える。過去に観測された死神のような形状の亡霊とは大きく異なっていた。
『これより目標にパーソナル・ネーム、イーグルを与える。射程に入り次第、咲の狙撃で様子を見ましょう』
 咲が絶妙なESPエネルギーのコントロールで機械翼を操り、音もなく空中で静止して狙撃銃を構える。
 間を置かずに銃声が轟いた。少し遅れてイーグルの名を与えられた亡霊の身体が閃光に包まれる。
『……命中確認。外傷は確認出来ません』
 咲が報告する。
 嫌な予感がして、自然と小銃を握る手に力が入った。
『目標、移動を開始しました。接近しています』
『散開し、動きを牽制しましょう』
 解析オペレーターの警告。次いで、奈々はすぐに散開を命じた。
 イーグルが翼を大きく広げ高度をあげていく。与えられたパーソナル・ネームに負けないほどの速度。
『敵ESPエネルギーの増幅を確認。衝撃に備えてください』
 解析オペレーターの言葉と共にイーグルの口が千切れんばかりに大きく開き、楕円形の光弾が発射される。光弾の向かう先には第四小隊長、黒木舞の姿があった。
 回避行動を取る為に舞が右に体を傾け、射線から身を引く。その時、奇妙な事が起こった。光弾が突然、舞を追いかけるように弾道を変えたのだ。
 舞は少し遅れて、光弾から逃げるように高度をあげていく。それを追跡するように光弾の弾道が再び修正され、舞の後に続いた。
「追尾してる?」
 華は呟いて、他の小隊長を振り返った。誰もが、戸惑いの視線を
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