一章 救世主
10話 宮城愛
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は太平洋に出たがっている。日本は、ユーラシア連合にとって重要な戦略的拠点になり得るのだ。そして、十一年前に起こった金融危機で唯一の後ろ盾であったアメリカ合衆国も没落している。そんな状況でなお日本が独立を保っていられるのは、ひとえに亡霊の影響だ。
白流島を取り囲む亡霊に対して、有効策、すなわちESP能力者を保有しているのは日本だけだ。亡霊は日本の独立を守りつつ、日本の壊滅に繋がりうる要因となっている。
故に、今の絶妙なパワーバランスを崩してはならなかった。亡霊を殲滅する時は、日本が単独で独立を維持できる確かな戦略を持った時でなければ意味がない。
しかし、現在中隊に属しているESP能力者は百九十二人。対して亡霊の総戦力は未知数。日本は今とても不安定な危うい状況にある。
その点、管理上都合は悪いが、桜井優はそうした情勢から蒙昧な大衆の目を逸らす格好の的だった。要は、物は使いようだ。それに、アレも完成しつつある。上田中将は灰色がかった髭を撫でて、小さく笑った。
「もうすぐだ……」
そう呟いた時、慌ただしく室内に男が入ってきた。
「報告します! 東京都夢野区で民間人が三名死亡。同時刻、同所にてESPエネルギーの発生が確認されました」
上田中将は、静かに男を見つめ、機械的に詰問した。
「亡霊が東京に? 何故、それまでに探知できなかった? 先制攻撃を受け、探知能力を喪失したのか?」
「いえ……。出力者は亡霊ではなく人間、ESP能力者です。これは殺人事件です」
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