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Raison d'etre
一章 救世主
7話 黒木舞(2)
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ない声が届く。
 荒い息を吐きながら、酷い筋肉痛になりそうだなぁ、とぼんやりと考えていた時、後ろから声がかけられた。
「君、入ったばかりにしては結構体力あるね」
 振り返ると、長い黒髪が印象的な長身の女性が走っていた。大人じみた造形をしているが、親しみやすい笑みを浮かべている為、それほど歳が離れているようには見えなかった。
「えっと……」
 優が困ったような表情を浮かべると、女性はクスりと笑った。
「ボク、第四小隊長の黒木舞くろき まい。君、新しく入った子だよね」
「はい。第一小隊に配属されました」
 走りながら答える。ボク、という一人称に違和感を覚えたが、一定の速度を保つために気にしている暇がなかった。
「名前、何だっけ?」
「桜井優です」
「ユウくんか。呼びやすいな」
 いきなり名前で呼ばれ、優は僅かに眉を寄せた。距離を感じさせない話し方だ。悪く言えば、馴れ馴れしい印象を受ける。新入隊員を気遣ってくれてるのかな、と優は舞の態度を好意的に受け取った。
『舞、マイクの電源を切り忘れているようだけど……』
 通信機の向こうから奈々の声。舞はギョッとした様子で慌ててマイクを切った。
「やっば……これ、よくやっちゃうんだよね」
 慌てた様子で奈々のいる本部の方を振り返る舞の姿がおかしくて、優はクスクスと笑った。大人びた外見とは裏腹にどこか子どもっぽい人だと感じた。
 それから、優は舞と小声で会話を交わしながら残りの時間を潰した。舞は優の一つ上で、今年で十七歳らしい。
「もう少し年上かと思ってました」
 素直にそう言うと、舞は目を何度か瞬いて、次に意地の悪い笑みを浮かべた。
「逆にボクは君の事、もっと年下かと思ってたよ」
 優は何も言わず、じっと舞の瞳を睨みつけた。舞が笑う。
「良くて十四歳くらいにしか見えないかな。ユウ君、一四〇センチくらいしかないでしょ?」
「一四五センチです」
 不機嫌そうにそう言うと、舞は再び笑った。
「ごめん、ごめん。もしかして結構気にしてた?」
「気にしてません!」
 そう断言した時、警笛の高い音が鳴り響いた。次いで、通信機から奈々の声が届く。
『訓練はここまで。突然止まらない事。各自、身体を解してから各小隊ごとに点呼をとって』
 どうやら終わりのようだった。優は小銃を投げ捨て、その場に倒れ込んだ。背中の機械翼が重い。しかし、取り外す作業が非常に面倒である為、優は機械翼の存在を無視する事にした。
「はぁ、ようやく終わった。ボク、点呼取らないといけないから行くね」
 舞が乱れた息を整えながら言う。優は原っぱの上に座り込みながら舞を見上げた。
「はい。お疲れ様でした」
「じゃあね!」
 舞が背を向けて本部の方
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