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Raison d'etre
一章 救世主
7話 黒木舞(2)
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た。
 喧騒の中、京子の横に座っていた愛が立ちあがる。
「……そろそろ合同訓練の時間。早く行かないと遅刻する」
「だね。さっさと行こうよ」
 京子が立ちあがる。次いで、優の方を見やった。
「桜井も一緒に来なよ。場所、わからないでしょ?」
「うん。案内してもらえると凄い助かるかな」
「オッケー」
 京子が戸口に向かう。その後に愛が続き、最後に華と優が続いた。
「最後にここ出る人、鍵閉めて後で私に渡してね!」
 第二訓練室を出る際、華が室内に残った女の子たちに向かって声を張り上げた。中からそれに了承する返事が疎らに返ってくる。
「小隊長って大変そうだね」
 優が思った事をそのまま口にすると、華は小さくはにかんだ。
「確かに大変だけど、信頼されてるって事だからちゃんと応えないとね。責任は果たさないと」
 同い年には思えないほどしっかりとした答えが返ってきた為、優は思わず華の顔をまじまじと見つめた。
「篠原さんはここに来て結構長いの?」
「もう二年目だよ。それと数ヶ月かな」
 と言う事は、十四歳の頃から亡霊と戦っていたと言う事になる。
「ここに来た時は不安で一杯だったけど、周りが良い人ばかりだったからすぐ慣れちゃった。桜井くんもすぐ慣れるよ」
 華はそう言って笑みを浮かべた。釣られて頬が緩む。
「そうなれるように努力します。篠原小隊長」
 ふと視線を華から前方に移すと、京子が足を止めてこちらを急かすように手招きしているのが見えた。その横に立つ愛も無言で優たちが追いつくのを待っている。それを見て、優はこれから先も亡霊対策室で何とか上手くやっていける気がした。

 次の日。優は野外に設置された第一訓練場の中を走っていた。訓練場と言っても、特別な訓練施設がある訳ではない。ちょっとした平地に壮大な原っぱが広がっているだけだ。本来なら大規模飛行訓練に利用する訓練場らしいが、今日は基礎体力訓練の為に使われていた。
 寒空の下、原っぱに複数の足音と荒い息遣いが静かに響く。優は背中に機械翼を広げ、両手で小銃を構えて原っぱの上を走り続けていた。その前後には優と同様に機械翼や小銃、通信機などを装備した少女たちが黙々と走り続けている。特殊戦術中隊の基礎体力の向上を目的としたランニングだ。陸上自衛軍ほどの厳しい訓練ではないが、特に優は男性であるという理由で他よりも厳しいノルマが課せられている。優は体力の配分に注意を払いながら、原っぱの上を走り続けた。背中に装着した機械翼がずっしりと圧し掛かってくる上に、両手に持つ小銃のせいで腕がだるくなってきていた。中学の時に軟式テニスをやっていた為、体力にはそこそこ自信があったのだが、予想以上に厳しい訓練だった。
『後五分』
 通信機から奈々の感情の籠ら
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