一章 救世主
7話 黒木舞(2)
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った後、愛はすぐに前方に向き直った。
「ね? 無愛想だけど、誰にでもこんな感じだから気にしないで」
京子が笑いながらそう言う。隣の愛は何も言わなかった。対象的な二人の様子に思わず優はクスりと笑みを零した。
「よろしくね。えっと、長谷川さんと宮城さん」
「はい、お喋りストップ! 説明始めるよ!」
黒板の前に立つ華が声をあげる。京子は仕方がないといった様子で前に向き直った。
「入隊して十日間は専門の教育部隊の人が色々と教えてくれたと思いますが、それ以降は各小隊で細かなケアをする事になってます。それで、小隊長の私が実戦の細かな注意とかすることにしました。対象は桜井くんと柚子ちゃんだけなんだけど、この教室で二人だけってのは寂しいから、交流を兼ねて暇な人に来ていただきました。何か分からない事とかあれば、私だけじゃなく、周りの人にも遠慮なく聞いてください」
華はそう言って、黒板の方にクルリと向き直った。チョークの音と共に、黒板に何か書き始める。
「まず最初は集団飛行! 戦闘は一人では出来ません。強大な亡霊群の前には一人一人の細かな飛行技能なんて意味を成さないのです! よって指示された隊列を乱さず、維持する事が最も大切です。その為には――」
華が説明を始める。その多くは入隊直後に教育部隊の人から教えてもらった事の復習に近いものだったが、実戦的な視点から語られるそれは無駄のないものだった。優は実戦での事を思い出しながら、華の話に真剣に耳を傾けた。
「――つまり、空戦機動とは何かと言うと運動エネルギーと位置エネルギーの変換であり、このエネルギー変換に対する長期的なプランが戦闘に大きな影響を与えるのです。加えて、私達はESPエネルギーの残量とそのコストを考えていかなければいけない。飛行訓練の時には是非この話を思い出して訓練してほしい、と思う次第です。えっと、えっと、次は――」
「……華、時間」
話の区切りがついたところで、優の斜め前に座っていた宮城愛が声をあげた。あまり大きな声ではなかったが、よく通る声だった。華が室内の壁にかけられた時計に目をやり、しまった、という顔をする。
「わっ、もうこんな時間……。じゃあ、今日はここまで。続きは明日、ここと同じ場所で。桜井くんと柚子ちゃん以外も暇な人は来てね!」
華の言葉が終わると同時に、室内が騒がしくなる。いつの間にか机に突っ伏していた京子が顔をあげ、大きく欠伸した。そこに黒板の文字を消し終えた華が駆け寄ってくる。
「ちょっと京子、堂々と寝すぎだよ」
「だって私、この話何回も聞いてるし」
京子があっけらかんと言う。華は困ったような笑みを浮かべて優に視線を移した。
「桜井くんは京子みたいにならないでね」
「がんばります」
優はそう言って頷い
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