一章 救世主
4話 佐藤詩織
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奈々の命令と同時に引き金を引く。次の瞬間、辺り一帯から同じようにESPエネルギーが放たれるのがわかった。轟音が轟き、大気が震える。凄まじいESPエネルギーの奔流が亡霊たちに向かって雪崩れ込んだ。
ESPエネルギーの波から逃れようと亡霊が散開を始める。しかし、間に合わない。中央部の逃げ遅れた亡霊が巨大なESPエネルギーの波に呑まれて消し飛ぶのが肉眼でも分かった。だが、相手は百を越える大群であり、依然として速度を緩める気配はない。
『第二射用意!』
慌ててESPエネルギーを小銃に装填する。その間にも亡霊たちは恐るべき速度で距離を詰めてくる。
『撃て!』
周囲の空気が膨張するかのような錯覚とともに、再び膨大なエネルギーが放出される。しかし、亡霊群が回避行動をとる様子がない。
『後退! 後退!』
奈々の命令とともに、やや前方の上空にいた華が小さな指揮ライトをつけた右手を振り、単純後退を命じた。それに合わせて一斉に第一分隊が後退を始める。
優はその時、先程放たれた第二射が亡霊の群れに風穴を空けるのを見た。しかし、亡霊群は止まらない。死を恐れない亡霊の行進を見て、恐怖を覚えるより先に頭の中が急速に冷え切っていく。
『散開!』
亡霊の群れから紫色に光る小さな弾が高速で飛び出した。ESPエネルギーを凝縮した弾丸だ。当たればただではすまない。
悲鳴があがり、隊列が僅かに乱れる。混乱が広がる中、最前列に位置する華が散発的な攻撃を命じる合図を送ったのが見えて、優は引き金に指をかけた。
『後退! 両翼が呑まれかけてる。中央部は全力で後退して!』
亡霊との相対距離が五十メートルを切る。隊列が大幅に乱れ始め、秩序だった攻撃が難しくなり始めるのが分かった。新たな判断を仰ごうと華に目を向けるも、いまだに散発的な攻撃命令が解かれる様子はない。優は前方に迫りくる亡霊に向かって銃撃を加え続けた。
『敵両翼が中央部に集中! 中央更に下がって!』
奈々の言葉に、中央部に位置する優は牽制を諦めて更に後退を始めた。視界に映る亡霊の数が加速度的に増えていく。
まずい。そう考えて、距離を離そうと機械翼の出力を高める。だが、遅かった。亡霊群が優の位置する中央部に深く切り込み、優目指して直線的に距離を詰めてくる。
「――っ!」
狙われている。そう直感し、優は考えるより先に高度を上げた。
「桜井君!」
機械翼の駆動音に紛れて、通信機から華の声が届いた。しかし、振り返る余裕はない。
優は高度を上げながら、下方から迫り来る亡霊に小銃を向け、引き金を絞った。刹那、亡霊の顔面部分が弾け飛び、残った胴体部がゆっくりと眼下の海へ落下していく。しかし、その後ろから新たに数十体の亡霊が接近してくるのを見て、優は迎
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