一章 救世主
2話 篠原華
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つく少女たちの精神もケアしなければならな事も女である奈々が抜擢される要員となった。
そうやって、奈々は司令の座についた。前例がないことの連続ではあったが、奈々はよくやった。思春期の少女たちをまとめあげ、最低限の防衛を可能とした。
そうやって、今まで何年も持ちこたえてきた。自分の指揮に国防の全てがかかっている、というプレッシャーに耐えてずっとやってきた。こうやって、死ぬまで戦い続けるのだろうと漠然と思っていた。
しかし、その予測は三週間前に破られた。青天の霹靂と言える。亡霊の出現からはじめて、男のESP能力者が確認されたのだ。それが桜井優だった。
奈々は奇妙な高揚感に包まれながら、ディスプレイをじっと眺めた。訓練で見た動きとは違う、熟練した兵士の動きを桜井優は見せていた。才覚か、はたまた土壇場の偶然か。
――それは、今考えるべき事ではない。
奈々は思考を振り払い、急遽転がり込んできた好機に飛びついた。
「後退を!」
奈々の声で、第一分隊が再び後退を始める。第二小隊の後方支援が激しさを増し、亡霊群が散開に移る。
ひとまず危機は脱した。しかし、油断はならない。両翼に大きく展開する亡霊の布陣を見て、奈々は逡巡した。
距離が開いた。これは、遠距離攻撃に長ける──近接戦闘と比べれば──特殊戦術中隊にとって有利だ。暫くは現状を維持し、相手を削っていくのが一番か、と考える。
「押しています。追撃をしかけますか?」
中央部の亡霊が後退を始めた。それを受けて、第二小隊長の姫野雪が追撃の有無を問いかけてくる。確かに中継映像を見た限りでは押しているようにも見える。しかし、ESPレーダーと識別子マップを見て奈々は顔を曇らせた。中央部は特に相手の戦力が薄い訳でも、味方の戦力が集中しているわけでもない。加えて、両者の密度が中央部と殆ど変わらない両翼は拮抗したままだ。つまり、中央部は押している訳ではなく、誘われているだけ、と考えられる。
「……第二小隊・第二、三分隊と第一小隊第一分隊、一〇〇前進後、両翼に展開。両翼、突撃待機」
奈々は慎重に指示を出した。後退する亡霊に合わせて、特殊戦術中隊の中央部が僅かに突出する。そして、奈々の合図とともに、両翼が突撃を開始。同時に、中央部が敵両翼の側面から襲いかかる。両翼に戦力を集中し、相手中央部が慌てて前進してくるが既に遅かった。敵両翼は側面と正面からの集中砲火を浴び、無残に四散していく。
加速度的に減っていく亡霊の数を見て、奈々は安堵の息をついた。戦いは終息に向かっている。しかし、気は抜けない。亡霊は人間と違い、戦略的な撤退をしない。戦術的な後退はあっても、亡霊は全滅するまで襲いかかってくる。降参という概念を持たないのかもしれないし、死に対する恐怖や価値観が人間の
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