一章 救世主
2話 篠原華
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たコントロールパネルを操作してハッチを開いてから第一小隊に出撃命令を出した。続いて、第二小隊から報告が上がる。
「第二小隊、準備完了。指示を」
「待機」
第一小隊とは違う命令を出してから、奈々は部屋を飛び出した。長い廊下を歩きながら腕時計に視線を向ける。一四二七時。亡霊の一次発見から既に八分経過していた。
司令室に入ると電子・解析オペレーターが亡霊の侵攻ルートを補足する作業に入っていた。壁に埋め込まれた巨大なディスプレイには出撃準備室の様子が写し出されている。全員の準備ができたようだった。
奈々はコンソールを叩いてディスプレイを切り替えた。大きな部屋に一人だけ佇む少年の姿が映る。まだ幼く、中性的で整った顔は緊張で強張っていた。カメラがもう少し離れていれば、華奢な身体も相まって少女と見間違えたかもしれない。そして、その華奢な背中には不釣り合いな巨大な機械の翼を有している。
随分と絵になる、と奈々は画面を見ながらぼんやりと思った。照明を上手く利用すれば、翼を休める天使のようにも見えるかもしれない。
「優君、気分はどう?」
『緊張してます』
奈々は優を安心させようと笑顔を作った。向こうにもこちらの姿が映るディスプレイが存在する。
「大丈夫。訓練通りにやれば何も問題ない」
『……はい』
優は不安を隠すように硬い笑顔を浮かべた。
奈々は少し思案してから、コンソールを叩いた。ディスプレイが二分割され、新たにマップ情報が写し出される。第一小隊は既に本部から三キロメートル離れた地点まで進んでいた。
「第二小隊出撃」
出撃ハッチから、第二小隊長の姫野雪を先頭に少女たちが飛び出した。その数およそ三十。第一小隊を追いかけるように青空の中を羽ばたいていく。
「優君、続いて」
『はい』
少女たちの後から少年が飛び出す。今回が桜井優の初陣だった。他にも一人、今回が初陣の少女がいる。初陣と言っても実際に戦闘に参加することはなく、部隊の後方から戦場を見せるだけだ。
奈々は再びコンソールを叩いた。画面が三分割される。一つは高機動ヘリが部隊の背後から撮影した中継映像。他はESPレーダーと彼らの機械翼につけられた識別信号を映す俯瞰マップだった。高機動ヘリには医師や高度な医療器具が用意されており、負傷者の応急処置・輸送などにも利用される。これは、実際的な役割よりも中隊員のメンタル面に多大な貢献をしていた。
「方位二-八-〇。衝突予測ポイントまで残り三〇キロメートルを切りました」
「総員に通達。後十分で接触する。第一小隊、速度を落とし、第二小隊との距離を詰めなさい」
奈々の命令とともに、識別レーダーに映る先頭集団の速度が徐々に落ちる。機動ヘリから中継された映像では、第一小隊長の篠原華しのはら
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