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Raison d'etre
一章 救世主
2話 篠原華
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「わ、私がですか?」
 華が動揺した様子を見せた後、おずおずと優の元に泳いでくる。
「あの、ちょ、ちょっと、ごめんね」
 華の手が腰のベルトを引き延ばし、優の腰に巻きつけ始める。自然と抱きつくような格好になり、優はついと視線を外した。
「終わりました」
 ほのかに顔を赤くした華がプールサイドの女に向かって声をあげる。女は満足そうな表情を浮かべて、口を開いた。
「前期過程で習っただろうけど、それが連結ベルト。機械翼が破損したり、負傷して動けなくなった味方を身体に固定して、引き上げる為のもの。大事なことだから恥ずかしがってないで、しっかり締めるように。そのまま、桜井くんを引き上げてみて」
 華が微かに躊躇した様子を見せた後、腰に両腕を回してくる。肩から腰までぴったりと密着する為、自然と二つの柔らかいものが押しつけられる。優はあまりの気まずさに視線を逸らし続けた。
「ちょっと持ちあげるね」
 華が告げた次の瞬間、優の身体が華に引っ張られるようにして浮いた。身体に纏わりついていた水が下に落ちていく。連結ベルトでしっかりと固定されている上に華の腕がしっかりと回されている為、予想以上に安定していた。
「オッケー。降ろして」
 女の声とともに、華がゆっくりと高度を下げて再び着水する。直後、再び華が腰に回した手をごそごそと動かし、連結ベルトが外れていくのがわかった。
「よーし。じゃあ、今度は桜井くん、やってみて」
 女の声に優は頷いて、自らの腰に装備された連結ベルトを引き延ばした。それから、華の腰に手を回そうとした直前、優は僅かに動きを止めて、顔を赤くした華をチラリと見やった。中隊には女性しかいない為、異性が苦手なのかもしれない。
「ごめんね。出来るだけ早く終わらせるから」
 そう言って、華の腰に手を回す。
 華の腰は折れそうなほど細かった。女性の腰に手を回すという行為に慣れていない為に緊張はしたが、慣れない訓練である為、連結ベルトの固定に意識の大部分が持っていかれた。それに十日後には実戦が待っている為、恥ずかしがっている余裕などなかった。
 黙々と連結ベルトを戦闘服の持つ機構に固定させて、最後に連結ベルトを軽く引っ張り、しっかりと繋がっている事を確認してから優は顔を上げた。
「終わりました」
 プールサイドの女に向かって報告する。女は遠目から連結ベルトの様子を確認するように目を細めて、満足そうに頷いた。
「オッケー。相手の腰に手を回して、それから機械翼を展開させてみて。あ、腰ってのはウェストじゃなくて、骨盤の辺りね。上に手を回すと痛いから」
 女の言葉通り、優は華の腰に手を回した。華の身体が硬くなるのが分かる。
「持ちあげるね」
 華の耳元で告げてから、機械翼を展開させる。
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