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Raison d'etre
一章 救世主
2話 篠原華
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にこりと笑って、小さく頭を下げた。
「第一小隊長の篠原華(しのはら はな)です。後期課程の訓練は複数人でやるものもあるから、私がお手伝いすることになりました」
「よろしくおねがいしますっ」
 慌てて優も頭を下げる。
 第一小隊長ということは、優の直属の上官ということだ。
「確か同い年だったかな? よろしくね!」
 華と名乗った少女はそう言って、手を後ろ手で組んで、えへへ、と前かがみに笑った。普通ならわざとらしく見えるその仕草も、不思議と自然な動作に見える。
「じゃあ、俺は戻らないと。頑張れよ」
 準がそう言って、引き返していく。
 ありがとうございました、と優が声を投げかけると、準はひらひらと手を振って、そのまま階段の方へ消えていった。
「それじゃあ、桜井くん、こっちに来て」
 華が歩き出す。
「はい」
 頷くと、ぴたりと華の足が止まった。そして、不満そうな顔で優の方を振り返る。
「えっとね、敬語はいらないよ。上下関係とか、気にしなくていいから」
 優は微かに躊躇した後、素直に華の言葉を受け入れた。
「うん。わかった。よろしくね」
 華がにこりと笑い、再び歩き始める。優は黙ってその後を追った。
 歩いてすぐに華はある扉の前で立ち止まり、それを横に開いた。扉の先には広大な空間が広がっている。華が中に入っていった為、優も後に続いて扉をくぐった。
 そこには、五十メートルほどのプールがあった。天井が高く、外と違って照明が強い。プールサイドには黒い制服を着込んだ二人の男と一人の女が雑談していて、優達が入った途端に慌てて話を止めた。
「これを」
 男の一人が機械翼を持って近づいてくる。優と華はそれを受け取って、装着を始めた。
 優が慣れない作業に手こずっているうちに、華はすぐに機械翼の装着を終えたようだった。
「手伝おうか?」
 にこにこと華が声をかけてくる。それで、先日の飛行訓練時に同じように声をかけてきたのが華であることに気付いた。
「うん。ちょっと、お願い」
 素直に華の好意に甘える事にする。
 華が手早く後ろに回り、機械翼の装着を手伝い始める。
「はい、できたよ」
 あっという間に作業が終わり、華が一歩下がる。
「ありがと。篠原さん、本当に早いね」
「桜井くんも慣れたらこれくらい楽にできるよ」
 にこにこと笑う華の肩越しに、プールサイドの向こうに立つ女が手招きするのが見えた。
「準備が出来たら、こちらへ」
 華と並んで、女の方へ向かう。
 その間、残った男が反対のプールサイドで三脚とカメラを用意していた。訓練記録を撮るのだろう。
「よし。じゃあ、簡単に説明しようか。今日やるのは着水訓練。基本的に亡霊の迎撃は洋上で行われ
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