112 松本
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行に行っていたとは考えてもいなかった。自分は藤木だけを誘う事はあまりなく、せいぜい自分の作ったマフィンを御馳走しようとした時くらいであった。あの時は小杉が割り込んだが。
「へえ、リリィさんも藤木君を誘う事があるのね」
「いや、あの時は球技大会で藤木君が蹴球で活躍してる所を見なかったし、その頑張ったご褒美に連れて行ってあげようかなって思って・・・。でも私は花輪クンが好きなの・・・」
リリィは慌ててしまい、赤面した上に上から目線のような言い方になってしまった。
「そう・・・、でも藤木君もきっと喜んでいるわよ」
「う、うん・・・」
「それに今の藤木君、前より変わった気がするの。スケートで世界一を目指すって言ってたし、前に西村君が濡れ衣で責められそうになった時、必死で庇ったから少し気が大きくなったかもね」
「へえ、笹山クン、君は藤木クンの事を理解しているんだね」
「え?う、うん・・・」
笹山は以前藤木が不幸の手紙事件で一時決別した時、それでも心の片隅では藤木の事が心配でいた。また、自分も堀内から上履きに悪戯された時(正確にはたかしにやらせていたが)、多くのクラスメイトでは藤木かと疑ったが、それでも笹山は藤木ではないと思っていた。
(やっぱり私は藤木君を・・・)
長野県松本市。嘗て城下町として栄えた場所であり、戦時中は空襲の被害を受けなかった都市でもある。また、音楽、山岳、学問でも有名な街でもある。藤木は松本に到着していた。まず荷物を旅館に置いていき、集合場所である開催地のスケート場の会議室へと向かう事になっていた。
藤木とその両親は集合場所に入っていた。入口の机に受付係の女性が座っていた。
「こんにちは。出席を確認しますのでこちらに自分の名前の所に丸を付けて、こちらの抽選箱のくじを引いてください。くじに書かれてある番号が明日の大会の演技の順番になります」
「はい」
藤木は自分の名前の所に丸を付け、くじを引いた。番号は「18」とあった。つまり藤木は明日は18番目に自分の演技を行う事となる。
(18番目か・・・。後ろの方か。まあ、後ろの方ほど審査員に印象を残しやすいって言うしな・・・)
藤木とその両親は一つの机と椅子に座った。そして出場者が皆集まった。司会を行う男性が喋りだす。
「えー、本日はお集まり頂き、有り難うこざいます。中部大会での注意事項を色々と説明します」
男性は控室の場所や当日の流れなどを色々と説明し、終了した所で藤木は両親に練習をしてくると断った。藤木は足換えシットスピンやトリプルルッツ、およびトリプルサルコウ、そしてステップシークエンスの練習をした。これらを演技に取り入れようと考えていた。しかし、藤木は地区大会で見せたアクセルからのスパイラルの姿勢はここでも通用するのかと不安にな
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