第九話
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第九話 近付く敵
今田先生と今日子先生は今は二人で双方の行きつけの喫茶店、神戸らしい洒落たイギリス風の店の中でだ。
ティーセットを楽しんでいた、その二人がだ。
紅茶を飲みつつだ、同時に言った。
「ねえ」
「今ね」
二人同時に言ってからだ、お互いにだった。
顔を見合わせてくすりと笑って今度はこう言い合った。
「同時に感じたわね」
「そうね」
「それで言葉に出すなんて」
「私達らしいわね」
二人は今は上品な着物姿だ、着物姿でイギリス風のティーセットを楽しんでいるのだ。
「今もね」
「そんな風だったわね」
「それでね」
今田先生から今日子先生にあらためて言った。
「今このお店の方にね」
「ええ、来ているわね」
今日子先生もあらためて応えた。
「こちらにね」
「そうね、どうもね」
今田先生はさらに話した。
「私達に用があるわね」
「それで来ているわね」
「どうしようかしら」
「あら、もう答えは出ているでしょ」
「ええ」
今田先生はにこりと笑って今日子先生の問いに答えた。
「このままね」
「お茶を飲むのね」
「そうするわ。あの人もわかっているから」
「ええ、こうした時は何もしない人よ」
「無粋なことは絶対にしないわ」
「優雅なレディーよ」
それがこれからここに来る者だというのだ。
「だからね」
「ここでは何もしないわ」
「また今度ね」
「機会をあらためてね」
今日子先生も言う。
「そうなるわね」
「だから今はね」
「ここでお茶を飲んだままね」
「あの人の分も注文しようかしら」
「それはいいことね」
今田先生のその提案に笑顔で頷いてだった。
「それじゃあね」
「今からね」
こう言ってもう一人前注文したのだった、ティーセットも含めて。
第九話 完
2017・1・1
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