第五話 INグレンダン(その3)
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妙齢の女性、けだるげな表情を浮かべたグレンダンの女王アルシェイラ・アルモニスだ。
「あ、あんたも久しぶりね。悪いけどこのままでいさせてもらうわね」
ちっとも悪びれずにのたまうアルシェイラ、とはいえその体勢に理由が無い訳でもなく腹が膨らんでいる。
決して昨日の夕食を食べすぎたからでも(食べすぎはしたが)食っちゃ寝の生活で豚になったわけでもない。単なる妊娠である。
「それで陛下、今度は何を押し付けようっていうんですか?」
「あ、いや今回はクララじゃなくってあんたに用があんのよ」
クララでなくニーナに用があるというアルシェイラに驚く二人。そもそもニーナとアルシェイラは数度しか会ったこともなく声をかけられる動機が判らないからだ。
「私に……ですか? クララにじゃなくて」
「そうよ。あんた……えーっと?」
「ニーナですよ。また忘れたんですか」
ヴェルゼンハイムとの戦いの前に続きまた忘れているアルシェイラに呆れながらクララが教える。
「うるさいわね」
クララに向けて一つ噛みつく。
「ニーナ、天剣にならない?」
グレンダンの一大事をあっさりと切り出す。
「「はあっ!?」」
驚愕が二重奏を奏でる。新たな天剣、それも外来のぽっと出ともなると生まれる波紋は決して小さなものではない。
「だって実力は問題ないし。今天剣の数が少ないから増やせって官僚どもが五月蠅いのよ」
レヴァンティンとの戦いの前、二振りの空きを埋めるよう官僚からせっつかれていたが同じ事が今起きているのだ。
無論実力の無い者をお飾りに据えるつもりはないので未だ一つも埋まっていない。
終わりの時に備える必要は無くなったがそれは女王など極一部での話で一般の市民は以前と同じく天剣授受者に憧憬と尊敬の眼差しを向けているのだ。
「評価していただけるのは嬉しいですが、私はグレンダンに留まるつもりはありませんので」
とはいえニーナはあくまでも一時の旅人であるとし丁重に辞退する。天剣となっては世界を旅するという目的も果たせないのだから。
「そう、まあとりあえずはいいわ。気が変わったら歓迎するから何時でもクララに伝えてくれればいいわ」
特に本気でもなかったのでひらひらと手を振るアルシェイラと別れクララの執務室へ向かう。
昨日と同じく山の様な書類を処理するクララに先程抱いた疑問を投げかける。
「なあクララ、私を天剣に据えようと思うような状況なのか?」
他都市から来た人間をいきなりグレンダンの頂点といっても過言ではない地位につけようとするなど普通ならあり得ないのではないか、そんな事をしなければならない状況なのか、と。
「確かに空きは多いですし、揃っていた方が市民の安心感も増しますからね」
グレンダンの行政に関わるクララも一部に同意を示す。最強の守護者で
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