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恐怖を味わった高校生
恐怖を味わった高校生
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帰ってきた。でも、家の中は真っ暗で何も見えない。この時間には息子が奥の部屋で宿題をしている筈なのに……。嫌な予感が胸をよぎったわ。手探りで、やっと探し当てたキッチンの蛍光灯をつけた。
 その瞬間、義雄≪よしお≫の姿が、強烈な印象を伴って目に飛び込んできたわ!
 四畳半と奥の六畳の間を仕切っている鴨居に――ああああぁぁぁぁ……何ということなの! 義雄の首には、太いロープが食い込んでいる。殆ど風はない筈なのに、ブラブラと揺れている。義雄を見上げて、わなわなとその場に座り込んでしまった。
 涙でかすんだ目を凝らして、再度見上げた。既に乾燥して綿のような鼻水が、かすかな風になびいている。口からは長い舌を出し、真下には大量の屎尿が広がっていたわ。息子を降ろしてから、慌てて救急車を呼んだけれど、既に心肺停止で手遅れだったの。その後の事は、全然覚えていないの。         
 気が付けば、病院の地下にある霊安室で、息子に縋って泣きじゃくっていた。
 胸騒ぎがして、私一人家に帰り、息子が大事にしまっている玩具の宝石箱を捜した。
 ようやく、私宛にしたためた遺書らしい紙切れを見つけた。読んでいるうちに、止めどなく大粒の涙が溢れ出したわ。大袈裟でなくて、畳には小さな涙の池ができた。
 随分前からいじめにあっていたなんて! 私は、少しも知らなかった。母と息子の二人だけなのに、親として失格だったわ!
(貴男を、いじめていたのは一体誰なの! 私が復讐をしてあげるわ! 絶対に呪い殺してみせる!)
 ブラブラと鴨居で揺れている「霊」になった義雄の蒼い口から、怨嗟≪えんさ≫の言葉が私の脳に轟いた。
「クラス委員長の園田君、隣の席にいた本田君。だけど、一番悔しいのは幼馴染だった鈴木君だった。あんなに仲良しだったのに! いじめる側に立つなんて! 俺をかばったりしたら、今度は自分がいじめの対象になる。だから俺を無視した! 母さん。頼むから皆に復讐してくれ……!」
 私は、楽しそうに笑っている、義雄の黒いリボンがかけられた遺影に向かって、必ず呪い殺してやる、と誓ったわ! 

 翌日、小学五年生の担任の先生に会って、さり気なく尋ねた。
「昨夜亡くなった吉田義雄の母親です。今晩お通夜を執り行います。ぜひ、同じクラスの皆さんに、あらかじめご挨拶しておきたいと存じます。無理なお願いでしょうが、いつでも結構です。お名前と顔をお教え願えれば幸いです』
『じゃあ、六時限目にホームルームを致しますので、その時はいかがでしょう?』
 私は、先生に深々と頭を下げて、感謝する振りをした。
『誠にありがとうございます。ご面倒をお掛け致しますが、先生、よろしくお願い致します』
 こちらの思惑通り、義雄をいじめていた同級生の顔と名前を、頭に叩き込めた。
 棺桶の中に寝ているような息子
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