俺の見る悪夢
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最近、決算準備の為に、深夜までの残業を余儀なくされているので、わずかの時間だろうが、睡魔に襲われて、ついウトウトしていたらしい。
雑音で我に返って、慌てて眼を開けると……。
俺の瞳に映ったのは、何かにおびえて、両手を頭の上に突き出し、カーと充血した眼をこれ以上は無理なぐらいに見開き、何かを訴えるような半開きの口をしている死体になった乗客達だ。その雑音の源は、何が起きたのかと慌てふためき、騒然と動く少数の生きている人々だ。
パニックとなった生存者は、ドアーに殺到して、まだ駅に着いていないにもかかわらず、それを開けようと騒いでいる。
パニクり恐怖で気が動転している俺は、新大阪駅で降りて、長い商店街を死体に足をとられ、転倒しながら走り抜け、気が狂ったように泣き叫んだ。ここでも同じポーズをしている累々たる死体が、あちこちに散乱している。
地上の様子を確かめようとして、無我夢中で地下から死体の密度が高い階段を何とか上り、やっとの思いで外に出ると、そこは混沌が支配していた。そう、地下以上に滅茶苦茶に混乱しているのだ。普段でも混雑していた目の前にあるタクシー乗り場は、正に狂乱状態にある。死亡したタクシー運転者の車に向かい、事態を良く呑み込めていない生存者の車の警笛が、あちこちで喧騒を奏でているのだ。
更に、あちこちの交差点では、何重か分からない衝突が起き、タイヤを上に向けている車や、炎上している車も数えきれないほど多くある。滅茶苦茶に破壊された車の残骸が、道路を埋め尽くしており、死体ばかりでなく、あちこちから血しぶきを出し呻いている生者も多くいる。
乗用車やトラックが正面衝突したのか、原型を留めないほど互いに食い込んでいる。
いずれにせよ、まるで伝染病のように死が生を駆逐し、おぞましい姿をした死者が幾何級数的に増加しているのが現状だ。この瞬間にも、死が俺を襲って来るのではないかと、びくびくしていた。でも、これまでの例から判断して、死は一瞬の訪問だから苦しまない、そう自分に言い聞かせて「死」と言う言葉を脳から追放しようと、試みたが、なかなか難しい。
偶然では片づけられない、理屈が通らない不可解な事象だ。
パイロットが突然死したのであろう、大小の航空機が、ビルに突き刺さるように激突していたり、道路に墜落し機体の破片と人々を撒き散らしているのだ。未だに漆黒の煙を出しながら炎上している。
俺は、スマホがつながらないので、地上ばかりか空にも注意を払いながら、家族の安否を確認するために、今はその数をめっきり減少させている公衆電話を探したが、死者がそのボックスを取り囲むようにして占領しているので、容易に電話できない。恐らく電話に殺到した人々が、例の恐ろしいポーズで死亡したためであろう。何とか死者を取り除き家に電話
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