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俺の見る悪夢
俺の見る悪夢
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 平均の下
 ・七十〜七十九 境界線級/ ボーダーライン
 ・七十未満 知的障害

 そう、俺はその女性の先生に「えこひいき」されていたのだった。母性本能をくすぐる可愛い存在であったのだろう。
 でも、夢では、先生の顔に悪魔めいた凄絶で邪悪な笑みが張り付き、周囲の空気を凍ったように冷たくさせ、負のオーラと生魚か卵が腐ったような耐えがたい臭気を、発散させていた。俺は、体中の血液循環が一時的に悪くなり、悪寒が背筋を走った。
 先生は、この世に多くの執着を残して、成仏出来ずに流離う悪霊になって俺に襲いかかったのだ。
 三つに裂けた青黒い舌を口から絶えず出入りさせ、金縛りに遭遇し身動き一つ出来ない俺の顔に、腐りかけた上半身の細かく千切れた肉片を落とし、猛烈な悪臭を放ちながら、白っぽい肋骨を見せ、腰から下をクネクネとさせて、茶色と焦げ茶色ミックスした毒蛇のコブラのようだ。
 その尻尾の先が天井に刺さっていて、歯のない口から焼けるような熱い涎を俺の顔に滴らせている。
 ガリガリに痩せた灰色の手で、パジャマと下着を剥ぎ取って、まる裸の俺を、所かまわず歯茎で噛み付く。痛さのあまり泣こうとしても、涙さえ出ない。突き上げてくる恐怖と不安で息苦しい。なすがまま、長い間、恐怖と痛さに耐えているが、暗い淵に引きずり込まれ、とうとう気を失ってしまう。
 両親の真ん中で寝ていた俺は、恐怖の涙をほとばしらせ、大きな声で泣き叫んだ。
 それは、丑三つ時と言われる午前二時頃だ。
「また怖い夢を見たよ!」
 と、全身を小刻みに震わせ冷たい汗にまみれた俺は、母にすがって、いつまでも嗚咽していた。泣き声は、俺たちが眠る十二畳ある寝室の空間を震わすばかりでなく、高校二年と大学四年の姉二人が、勉強部屋兼寝室にしている二つの部屋にも響き、姉たちを寝不足にしてしまった。
 優しい年の離れた姉たちは、誕生日以降九日間だけに起きる現象とは言え、一度も俺に向かって文句を言った事もなく、それどころか、俺を抱きしめて自分の事のように共に泣いてくれたのだ。まるで、母親のように! つまり、俺は三人の美形の女性に長い時間ハグされていた。一方、父は一言も発しなかったが、眼を潤ませて俺を見守ってくれた。

 次に俺が悪夢を見たのは、中学三年の時だった。
 公立の進学校を目指し受験勉強に励み、夜中一時過ぎに疲れた脳を休ませようと、ベッドにフラフラになった体を横たえ、唯一の楽しみである「眠りの世界の住人」になって睡眠をむさぼり始めた夜中二時頃、筆舌に尽くしがたい悪夢が、俺を襲った。
 自宅から二キロほど離れた中学校に自転車で行く途中、女性のくぐもった低い声が耳の近くで聞こえるので、思わず振り返ると俺のすぐ後ろに「それ」はいた。
 漆黒の目、闇夜のように黒い鼻の穴
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