二度も殺されたタクシー運転手
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違いない。タクシーに乗るより自前の車がない場合は、レンタカーを借りて米子自動車道を利用した方が経済的なのに……。
不審な二人を乗せて鳥取空港の南近くを走っている時、一人に
「急に吐き気がするから、人通りのない所で止めてくれや」
と言われて、その通りにした。もっとも、この時間では、歩いている人などいないが……。社外に出た男が、助手席を開ける仕草をするので、仕方なく開けた。すると、いきなり男は、私の女形のような華奢な首に、大きな登山ナイフで何度も何度も突き刺した。私が覚えているのは、それだけだ。後の記憶がないところから判断して、多分出血多量で苦しむ間もない即死であったのだろう。
私は、二人組のタクシー強盗をどうしても許せなかった。そこで、自ら鳥取警察署に出向いて、彼らの行状を目撃者として訴えてやると、四日後に米子≪よなご≫でお縄になったと、駅前で買った新聞に大きく顔写真入りで掲載されていた。どこで手に入れたのだろうか、私の三十代の顔写真も一緒に……。というのも、私の属するタクシー会社には、不鮮明な顔写真しか出せていなくて、何度も、鮮明な顔写真を提出するように言われていたが、何度言われても、ボンヤリとした写真しか撮れなかったのも、事実だ。この会社には、三十年以上お世話になっている。だが、足がうまく使えずアクセルとブレーキを踏む時に苦労することがあるのも、私に足がボヤーとしか存在しないのも、元々、死んで三十年経っているから、仕方がないと言えば、そうかもしれない。
でも、私は、今でも、依然六十三歳だが、現役バリバリのタクシー運転手をしている。
捕まった二人には、どのような刑罰を裁判員六名と三名の裁判官が下すのだろうか? 二度も、同じような殺され方をし、もうすでに鬼籍に身を置いている幽霊を、再び殺した罪の償いとして……。できれば、傍聴席に座って、検事と弁護士のやり取りを、いや、少なくとも裁判長が読み上げる主文だけでも、ぜひ聞いてみたいのだが。
しかし、【仕事が忙しい】ので傍聴席にゆっくりと座っていられないのが、とても残念だ。
―完―
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