二度も殺されたタクシー運転手
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ならば、JRの米子駅≪よなごえき≫からだとタクシーに乗れば、わずか十五分で着いてしまうからだ。でも、極まれにではあるが、皆生温泉を目指すカップルに乗車していただくことがある。
途中にある観光地では、記念のビデオを撮影される。私も知っている限りの名所を説明させていただきながら、思わず「ヤッターマン!」と、声に出しそうになる。長距離走行になるから、不覚にもヨダレさえ出てしまうほど嬉しい思いに満たされる。
また、三朝≪みささ≫温泉行きのお客さんも、長距離走行になるので大変ありがたい。三朝温泉は、一本道の山上にあるので、観光バス、自家用車、タクシーでなければ行けない。三朝温泉は、伝説によれば千百六十三年に発見された歴史的な温泉で、ラジウムおよびラドンも含まれる、世界でも有数の放射能泉である。また一部の旅館には、高濃度のトロンを含む温泉もある。
高いホルミシス効果――制癌・抗癌作用・癌転移の抑制・胸腺リンパ腫の発生低減、活性酸素病に対する効果・高血糖値の降下・放射線抵抗性の獲得、高線量照射に対する生残率の向上・中枢神経系への刺激作用・覚醒刺激としての認識・心理的ストレス軽減効果……など――が認められている。したがって、観光客だけでなく療養目的で訪れる湯治客も多くおられる。
ここで、我々運転手仲間で広く知られており、恐ろしい都市伝説(?)ともなっている話を紹介しよう。
第二次世界大戦中の千九百四十三年九月十日十七時三十六分五十四秒に発生した鳥取地震は、気高郡≪けだかぐん≫が震源地であった。マグニチュードは七.二であり、震源が極めて浅かったために、鳥取市で震度六、遠く瀬戸内海沿岸の岡山市でも震度五を記録した。激しい揺れにより、鳥取市の中心部は壊滅し、古い町並みは全て失われてしまった。木造家屋は、ほぼ全てが倒壊し、全壊率は八十パーセントを超え、八百五十四人の死者が出たのだ。夕食の準備中だったこともあり、地震後には市内十六ヶ所から出火した。水道管が破裂するという悪条件の下、幸い大火にはならなかったが、二百五十一戸を焼いた。
この震災の死者が、多く眠る市内にある墓地付近で、夜中〇時頃、青白い顔の若い女性が路肩にぼんやりと立っている。時代遅れのワンピース姿をし,髪も時代遅れのパーマを綺麗にかけている。年齢は二十〜三十歳ぐらいだ。(運転手達の話では、多少の食い違いがある)
手を上げるから仕方なく乗せると、その女性が、運転手に告げた場所はかなりの長距離だ。喜んで良いのやら、湧き上がる恐怖で悲しんで良いのやら分からないが、とりあえず、車をスタートさせた。長時間を要してやっと言われた家に到着すると,淀んだ空気中に線香の白い煙が漂っている。
「家から運賃をもらってきます」
そう力なく言い残して、家の中に入った。
運転手はイライラ
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