二度も殺されたタクシー運転手
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かかわらず、若い頃とは言え、商売女と何度も交渉を持ったために、私も妻も梅毒に罹り、共にお医者さんの世話になったことがあった。もうすでに完治したと思っていたが、当時の医学では、その程度の治療しかできなかったことは、致し方なかったと断念している。
ところが、妻はとうとう徘徊しだしたのだ。家が分からずウロ、ウロ放浪していたため、不審に思った人が警察に連絡して下さり、警察署に迎えに行ったのは、数え切れない。しかも、しばらくして、遂に私すら認識できなくなり、アパートに一人にしておけなくなった。かかりつけのお医者さんの紹介状を持って、ある病院に入れることができた。そこはまるで牢獄のような病院で、患者は入ることはできても、決して出られないよう厳重に幾重にも鍵が掛けられ、同時に、看護師さんが常に目を光らせている。着替えや荷物を持って行っての面会はできた。だが、本人に会っても妻は微塵も反応を示さなかった。
週に一度の割合で面会に行ったが、そのたびに、残念なことに増々病状が悪化しているようだ。
気分転換をはかるために、私が住んでいる湖山について少し話しをしてみよう。
近くには、産官学を推進し、特に農学部の研究では優れた成果をだしている鳥取大学と湖山池がある。 その池は、周囲十八キロメートル、面積七平方キロメートル、水深最大七.五キロメートルで大小多くの島を有している。
湖山長者の伝説は地元では有名であり、鳥取に生まれ育った人には常識だ。
湖山長者は広大な水田を所有しており、日が暮れるまでに田植えを終わらせようとして、扇子で太陽を招き返して日没までに終わらせたが、翌日には、全ての水田が池に変わっていたという話が伝承されている。
山陰本線に千九百九十五年、新たに鳥取大学前駅ができた。鳥取大学前駅と末垣駅≪すえがきえき≫の車窓から四季折々の美しい湖山池が見える。湖山池は、池として日本一広大だそうだ。私は、大小の島々に雪が降り積った水墨画のような風景を、車窓から眺めていることに魅了されている。その時間、私は至福に満たされる。もちろん、お乗りになっているお客様が、記念撮影をされているわずかな間だが……。
駅で客待ちをしていると、旅行カバンを重たそうに抱えた友人同士か、夫婦連れのお客さんは、大抵長距離なのでとても有難いお客様だ。
鳥取県は温泉王国で、皆生温泉、三朝温泉、関金温泉、浜村温泉、吉岡温泉……など数えれば、枚挙にいとまがない。
山陰最大の温泉地は、何と言っても皆生温泉≪かいけおんせん≫だ。白砂青松の海岸沿いに東西約一キロメートル、南北約〇. 四キロメートルの中で、観光旅館等約四十軒、約五千人お客さんを迎えられる。
「皆生温泉まで頼みます」
そう言って下さるお客さんは、ほとんどおられないのが現状である。なぜ
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