二度も殺されたタクシー運転手
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私は悲しいことに六十三歳である。何が悲しいのかと言うと、六十三を六と三に分解すれば【むざん】と読めるからだ。
縁起でもない嫌な語呂合わせだ。今年は、何か恐ろしいできごとが、この身に起こりそうな予感にいつも全身を包まれている。この予感が当たらないように、いつも神様にお願いしている。もし、神様が、おられるのならば……。おや、不謹慎な言葉をだしてしまった。内心では、神様が、この世をすべからく見ておられると信じているつもりだ。
でも、最新の宇宙物理学によれば、神とはビッグバンである。つまり、私は、ビッグバンを信仰していることになる。多世界解釈を持ちだすなら、ビッグバンが始まった時から、まるで泡の如く無数の宇宙が生まれている。無数の宇宙が、さらに無数の宇宙を生み出しているらしい。またある理論によれば、この世界には十一次元があるらしい。
これらの知識は、単なる本の受け売りだ。中学しか出ていない私にとって、内容はまるでちんぷんかんぷんで、少しも理解していない。
小さい頃、「末は博士か大臣か？」と言われていたが、はたち(二十歳)過ぎには、凡庸≪ぼんよう≫な人間になってしまった。どこでどう間違った道を選んでしまったのか？ 私自身も分からない。知能指数では、常に一番を独走していたのに……。
【何とかと天才は、紙一重】と昔から言われている。今の私は前者の部類に近いのかも。あぁ残念だ。誰でも知ったかぶりをして、自分を賢く見せたいと思うだろう？ この私も例外ではない。現在の私には、自由に使える時間が有り余るぐらいある。そう――暇に任せて多くの本を読める身分だ。
さて、前置きが長過ぎたが、ここで本当の自分を語らねばならならない時がきたようだ。
少し真面目に話しをしょう。
私は嘱託の身分ではあるが、現役バリバリのタクシーの運転手として活躍している。いつも心がけているのは、「お客様第一の精神で、常に安全運転をすること」だ。
主に、山陰本線鳥取駅北側でお客さんを待っている。
自宅は、鳥取駅より西の湖山駅≪こやまえき≫から歩いて十分ほどのアパートの二階だ。寂しさに狂おしくなる時もあるけれど、一人で住んでいる強い男だ、と常日頃から思っている。だって、田舎には怖いことが起きるかも知れないから！ 数十年前には、大阪に住んでいたことがあるからだ。
妻は、まだ四十四歳だったのに若年性アルツハイマーになり、県立病院に連れて行き診ていただいた。 お医者さんの診断では、前頭葉の血流が少なく、
「若い頃に性病に罹患したことはありませんか？」
と、問われ、私は正直に
「はい」
と、恥ずかしいので、小さな声で返事をした。お医者さんは雰囲気で察して下さったのだろう、それ以上の質問はなかった。
すでに、今の妻と結婚していたにも
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