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サメに手足を食いちぎられた恐怖の魚釣り
サメに手足を食いちぎられた恐怖の魚釣り
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えた。彼は、猛烈な痛さと恐怖であちこち走り回って暴れた末に、階段の反対側の海に転落した。泳ぎに自信を持っている船の所有者である吉岡君が、大谷君を助けようとして、約十メートル下の海に飛び込んだ。
 我々も、中を空にして浮力をつけたクーラーボックスを、テグスに固く結んで二人の近くの海面へ次々と投げた。二人とも救命胴衣を着用しているので水面に浮いているから、階段のある方に移動させれば簡単に救助できる、と軽く考えていた。
 ところが、クーラーボックスにつかまるどころか、真っ赤な血がブク、ブク、ブク、ブク……と二人の体から噴出していて、辺り一面、文字通り「血の池地獄」になったのだ。この時は、池ではなく海だったが……。
 サメにかじられて叫ぶ二人を、我々では助けられない。私は、頭が痺れるような感覚に襲われ、悪い想像のみが浮かんできた。
「どうしょう? どうしょう? どうしたら……二人を助けられるだろう?」
 と思ったものの、皆、オロオロとうろたえるしかなかった。
 二人の腹の底から絞りだすような悲痛な叫び声が、絶え間なく聞こえてくる。恐怖で喉が渇き吐き気を催し、体中の全ての筋肉が、ガタ、ガタ、ガタ、ガタ……と震えだしたが、勇気を奮い立たせて私は叫んだ。
「誰か、船舶免許を持っている者はいないか?」
「…………」
 誰も持っていないようだ。しかも、こんな時に限って近くに漁船の影すら見えない。漁船の乗組員に二人を救助してもらい、無線で助けを呼ぼうとしたのに……。こんなにも緊急を要する時なのに、尾藤イサオが歌う「悲しき願い」の歌詞、「みんな俺≪おいら≫が悪いのか」と言うフレーズが、唐突に頭に浮かんだ。
 私は、頭を二〜三度左右に振って、自分自身を今置かれている現実に戻し、皆に提案した。
「誰か、二人で賀露港まで吉岡君の船を使って、助けを呼んでくる勇気ある奴はいないか? くる時に彼の操船を見ただろう! きっと、簡単に操れる。二キロメートルだけ進めばいいんだ!」
あっという間の協議の末、私と最年長である子供売り場の大田主任に決まった。やっぱりだー! 
即座に二人は船に乗り込みエンジンをかけて陸に向かったが、運悪く船の中央部分から海水が入り始めた。船にあった洗面器を使って、必死になって何度も何度も繰り返し海水をすくいだし、船が沈みそうになる寸前に、大小の岩でできた消波ブロックに辿り着くと、我々の異常な様子を察知したらしく、漁を終えていた漁師が大勢集まった。
 我々の身に起きたできごとを簡潔に話すと、直ぐに関係先に電話してくれ、パトライトを点灯し、けたたましいサイレン鳴らして、パトカー四台と二台の救急車がすぐに到着した。そして、救助ヘリが連絡を受け、消波設備の上にいる仲間達を順次乗せて、賀露港におりてきたのだ。
 パトカーと救急車に乗っていた人々が、素早
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