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呪われた玉手箱
呪われた玉手箱
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[9] 最初
は一口も喉を通らなかった。
 その折に、湯灌≪ゆかん≫と死に化粧をして下さった女性に、
「亡くなったのは、ご主人様のお祖母様ですか?」
 と聞かれた。が、まさか真実を言えないので答えに窮して黙って頷いた。葬儀社の担当者達は、当然、私の妻である事は知っていたのだが……。
 何度も、何度も、ねぎらいの言葉を多くかけて頂いた。
「和夫さん気を落とさずに。……疲れの出ないよう気を付けてね!」
 だが、心ここにあらずの放心状態であったから、まともな返事さえ出来ずに上の空で聞いていた。約二時間後、喉仏から順に主な骨を骨壷に収めた後、急用があるからと皆に言って、タクシーで誰もいない寒々とした家に帰り、一階の和室で骨壷を前にすると、堰≪せき≫を切ったように大粒の涙が出て止らなかった。ただ、ぼんやりとして一時間ぐらい座っていた。
 が、ふと思いつき、壁に掛けてある額に入れた二人の新婚旅行の写真を、目近で見ようとして、立ち上がった時、突然、異変に気付いた。

 羽がなく脚は棘だらけの、体長九センチ以上もある真っ黒なゴキブリが、家中に這い回っていた。壁、畳、天井、……などが隠れてしまう程の無数のゴキブリが、家を占拠しており、私に向かってゾロゾロ集まって来た。外に逃げようとしたが、足から鋭い痛みがはしった。その後も何とかしてゴキブリどもから逃れようとしたが、奴らに徐々に食べられとうとう頭まで来た……。
 最後の瞬間、遥か遠くに閃光が私の脳を貫いたよう???●▼。

 例の木箱の中で手鏡が暴れ回り、低くてかすれた合成された音のような怨念に満ちた声(?)を出した。
【人を呪わば穴二つじゃ、イッヒヒヒヒー……】
 だが、手鏡が発した無機質な言葉(?)は、雑音に紛れ周囲に小さく響いただけだった……。


 ――完――











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