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第2話 王国の内憂
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を目出度くさせようと思う程度の野心はあった。越権行為とはいえ、それを指示したのが次期国王なのだ。逆らう者は少数だった。
 そもそも後継者争いなど存在しないのだから、国王と王太子の争いなど滑稽でしかない。しかし、文治派と武断派の派閥争いが絡むことで、事態は複雑な様相を呈していた。


「お、お待ちくだされ! 敵主力を誘い出すという意味において、われらは立派に役目を果たしました。それだけではござりませぬ。亜人どもの摩訶不思議な飛竜に虚を突かれたのであります!」

「レイリア嬢がクロフォード卿を庇いたいのは分かるが……例の "鉄の鳥" とやらかね? そのような眉唾を信じるとでも? 馬鹿馬鹿しい。鉄の鎧を纏った飛竜であろうよ。小賢しくも竜騎士を育成していたようだが、戦を知らぬようだな。飛竜に鎧を着せるなど所詮は亜人の浅知恵か」

「は、その通りかと。このクロフォード、次は遅れは取りませぬ」


 飛竜に鎧を纏わせる試みは過去何度もされてきたが、それは逆効果であると既に結論づけられていた。飛竜の持ち味はその素早さにあり、それを殺す行為は巴戦で不利になるだけであった。
 もともと飛竜の鱗は並の弓矢や魔法など跳ね返すのだから、鎧など必要ないともいえる。


(本当にそうなのだろうか)


 副官のレイリアは冷静になって考えていた。公爵家の姫でありながら竜騎士となった変わり種である。姫様のおままごとと風当たりは強かったものの、その才能は確かでありクロフォードにも将来を嘱望されていた。
 先任の副官が帰らぬ人となったため、急遽抜擢されていたのだが、才覚よりも公爵家に恩を売りたい政治的な理由が多分にあった。本人は気づいていない。


 とはいえ、レイリアがクロフォードを庇う形になったため、クロフォードへの追及は収まった。正しい形で彼女は役に立ったのだ。本人は不本意かもしれないが。


 若く柔軟なレイリアだからこそ落ち着いて考えることができたのかもしれない。奇妙な鉄の鳥は明らかに速度と火力でこちらの飛竜を上回っていたように思える。クロフォード隊長たちがプライドから認めることができないだけだ。亜人ごときに負けたというショックが大きすぎたのだ。
 しかし、直面する現実を認識すらできずに相手と戦うことなど、目隠しして争うようなものではないか。


(亜人国家というのはフェイクで、裏で人間が支配下にある亜人を戦奴隷として使っているのではないか。だとすれば支配者階級の人間とどうコンタクトをとるかが鍵だな)


 彼女もまた、無意識に亜人を見下しており亜人風情が異なる "文明" を築いているなど創造の埒外だった。


(コブロス殿によればソ連の亜人は超能力をもつらしいが……鉄の鳥もその一種とか? 馬鹿馬鹿しい。魔法か何か
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