竜宮城に行けた男
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けだった。
徒労と絶望感に打ちひしがれそうな私に、新たな一筋の光明を与えてくれたのは、イギリスの理論物理学者であるホーキング博士が著した論文であった。
彼は、「時間順序保護仮説」の中で、
「タイムトラベルが可能なのは、場のエネルギーが無限大でなければならない」
と、提唱している。
しかし、同時に、
「宇宙全体の割合では質量のある物質はわずか四パーセントにしか過ぎず、残りの九十六パーセントをダークマターとダークエネルギーが占めている」
と、主張していることを知りダークエネルギーと私が生まれながら身につけている超能力を、何とかして融合できないものかと、数年かけて研究をしたのである。千八百九十五年、H・G・ウェルズが著した「タイムマシン」の中で使用した機械装置を製作するのでない。私自身が、タイムトラベルをおこなって、時間の流れの中で過去・現在・未来を自由に移動できる方策を見つけたかったのだ。
H・G・ウェルズはイギリスの著作家であり、小説家としてフランスの小説家ジュール・ヴェルヌとともに「SFの父」と呼ばれて、SF的題材を数多く生み出した。タイムマシン、タコ型の火星人、透明人間等が有名である。その他にも動物を知性化した「モロー博士の島」、テロの道具としての細菌を題材にした「盗まれた細菌」、反重力を扱った「月世界最初の人間」……などがある。施設内にある図書室で彼等の著作に、我も忘れて没頭したのは、私が四歳頃だった。
様々な角度から研究してきた結論として、私が着目したのは、インドヨーガの修行を積んだ僧がチャクラで宇宙エネルギーを受け入れている事実だ。ヨーガの開祖はゴーラクシャ・ナータとされる。紀元後十世紀〜十三世紀頃には、「ハタ・ヨーガ」と「ゴーラクシャ・シャタカ」という教典が書かれている。
「悟りに至るための補助的技法として、霊性修行に取り入れるなら非常に有効だ!」
そう主張した伝統的ヨーガを私は信頼し、その教えを全面的に取り入れるのを決意したのだ。
来る日も来る日も、宇宙のエネルギーとつながる場所である第七チャクラの開化に努めた。
長い時間を費やして、遂にダークエネルギーを身内に取り込むのに、私は成功したのだ。
会社勤めで得たサラリーは、ほとんどが研究費に消えてしまった。だが、そんなことよりも念願の成就の方が私自身に占めるウエイトは、遥かに大きかった。壁に掛けた温度計が二度を示す真冬にもかかわらず、頭脳の働きを活発化するためにエアコンの暖房もかけていなかった。コタツに下半身を入れ、上半身に温熱効果がある長袖肌着を一枚だけ着て、研究に没頭していた。文字通り頭寒足熱を実践していたのだ。
一LDKの部屋で両隣の住人に壁を激しくドンドンと叩かれるまで、夜中にもかかわらず奇声を発しながら成功した歓喜に酔いしれて、全身
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