竜宮城に行けた男
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示すことなぞなかったのだ。
東京本社近くに借りている一LDKにこもり深夜遅くまで、浦島太郎、乙姫、竜宮城に関する文献、資料等の解釈に没頭した。それらに止まらず語学、人文科学、哲学、宗教学、歴史学、社会科学、人類学、考古学、自然科学、物理学、化学、生物学、宇宙科学、地球化学……などの書籍を必至になって読んだ。それらの書籍の中でも、特に必要だと思える箇所はていねいにノートに書いて覚えるようにした。更に、読書だけに頼らずに頭脳を駆使して、綿密な計画を練りに練ったのだ。
休日には、大規模書店や神田の古本街を血眼になって、目的の書籍や資料を捜し歩くことが会社で受けたストレスの解消法であり、同時に私が味わう大きな楽しみでもあった。
神田の古本街に行くだけではなく、現在の世界で使われている言語をできるだけ多く自由自在に話せるように、語学の勉強にも時間を充てたのだ。世界で使用されている言葉の多い順にコツコツと努力して、話せるように努力したのである。話している人数が多い順に列挙するすると、中国語、ヒンディー語、スペイン語、アラビア語、ベンガル語、ポルトガル語、ロシア語、日本語、ドイツ語だ。なぜならば、様々な文献資料を研究した結果だと、竜宮城で話されているのは必ずしも日本語であるとは断言できないからだ。
私の性格は社交的、協調的であり、何ごとにも疑えないタイプだと思う。
竹馬の友、同級生、社会に出てからは多くの尊敬に値する先輩や同僚に恵まれた。でも、あえて親友を作らなかったのだ。親友達に心配を掛けたくはなかったからだ。ゆえに、恋人はなおさらだ。本当は、人として胸中を何でも吐露できる親友や真の異性を渇望していた。しかし、積年の願望がその存在に勝ったのである。寂しいといえば胸が張り裂けるほどに、人恋しい時もあったが……。
二十九歳の時だった。様々な研究をしてきた末に、私はある結論に到達したのだ。それは、想念、言い換えれば脳の中で竜宮城等を創り出して、自らが浦島太郎になり伝説で彼が経験したであろう事柄を追体験するか、あるいは彼に先駆けて実体験することだ。
アルベルト・アインシュタイン博士が、ニュートン力学とマクスウェルの方程式を基礎として「質量、長さ、空間、時間等の概念は、観測者の慣性系で規定される相対的な事象であり、光速度のみ不変である」という特殊相対性理論を千九百五年に発表していた。特に、私はこの論文に大きな影響を受けて,基礎数学、高等数学、ユークリッド、非ユークリッド幾何学を学んだ。
更に、アインシュタイン博士は、加速度運動と重力を加えて、リーマン幾何学を使い重力場で
時空の歪みを説いた一般相対性理論を千九百十五〜千九百十六年に著している。
帰結として、光速を超えない限り過去のある時点には到達できないのだ。そのことを改めて確認しただ
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