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竜宮城に行けた男
竜宮城に行けた男
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[9] 最初
液晶画面が真実を映しているならば、ここにいる私は存在していないか、あるいは、偽の自分なのだろうか? つまり、二歳の時から、はかない夢の世界を――本当の世界だと思って、暮らしてきただけに過ぎないのだろうか?
 異次元にいた女王が、どんなに言おうとも、揺るがない私の歴史観にしたがえば、過去のある時点で消滅した事象は永久に復元できないのだ。
 思い返せば、二歳以来神童として生きてきた順風満帆過ぎる半生は、私には身に余る光栄であった。何らの頓挫≪とんざ≫も経験しない生は、虚像の世界を生きる骸≪むくろ≫に違いないだろう。じょじょに薄れゆく意識を何とか覚醒させながら考えた。
(何の目的があって、肉体を持たない観念だけの私に、様々な経験をさせたのであろうか? 今後の私は天国に召されるのか? あるいは地獄へと堕ちてゆくのだろうか? はたまた、宇宙の塵,分子、原子、電子、核へと分解され、永遠に宇宙をさすらい続ける運命なのだろうか?)
 そのような疑問に対して答えを知っているのは、私が今まで信仰してきた神様ではない。
 巨大で稲妻の如き輝きを放つ鋭利な大鎌を持ち、ボロボロの薄汚れたローブを着て白骨化している、施設長を装った死神に違いないだろう……。

 ――完――






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