竜宮城に行けた男
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発した宇宙電磁波探査装置ですら、宇宙の果ては観測できないの。貴方様の世界でいうビッグ・バン以前の宇宙を、今の時点では、力を入れて研究しております。私達の生命はある意味では永遠ですわ。我々は、既に全てのDNAは解析済みですので、細胞から遺伝子を取り出して、何度でも自分自身に注入が可能な医学を確立しているからです。百年毎に、高度な遺伝子組み換えを行っていますから、私達は永久≪とわ≫の生を獲得しています。最後のご質問ですが、私達がよりどころにしています思想、哲学に触れてみましょう。貴方様の世界での比較的近い思想は、ヘレニズム時代に成立した禁欲的な思想と態度を旨としたストア派ですわ。自分達が、『善い生き方である』と考えた生き方を実践するのです。ある人の堕落は無垢の他人の心まで、宇宙の底知れない奈落に陥れますわ。ソクラテスが言ったとされる、『ただ生きるのではなく、より善く、生きる』のです。また、私達の世界では、主知主義を遵守していますから、『徳即ち知』なの。簡単に要約すれば、このような思想を基礎にして、私達は生を享受しています!」
強靭≪きょうじん≫な私の頭脳も、あまりにも多くの変化に遭遇したので、かなり混乱が生じたのに違いない。だから、同じ質問をしたようなのに、女王は寛大な心で答えてくださった。女王の説明で、様々な疑問がすんなりと私の心に溶け込んだ。
この世界にも階層があったが、昔のインドのようなカースト制ではなく女王を頂点とした四層構造であり、テクニーク、ブリーディング、ディシング、テイクが下の層であるらしい。
テクニークは、最先端技術を駆使してまだ解き明かされていない宇宙の謎を研究解明することが使命であり、約八千人がたずさわっている。ここで使用するエネルギーは、ほとんど無限に存在する空気中の水素と酸素からの化学反応を使い、テクニークがエナジー蔵に貯蔵している。
ブリーディングを担当している者は、その名の通り、彼女達が食に資する牛、馬、豚、鶏……などを育成している。牧畜だけではなく、四百種を超える魚や魚介類の養殖をも営んでいる。
野菜等の食料は、天候に左右されない有機工場生産方式を採用しているのだ。だから、公害などはお目にかかりたくても、ここには存在しないのだ。
当然、彼女達二万人も料理も作れる。しかし、それを専門にしているのがディシングである。テイクに従事している者は、アマゾン川で定置網や投網≪とあみ≫を使って栄養豊富な魚類を
確保する。森林ではキノコ類等を採取している。更に、魚類やキノコ類を調理するのも仕事だ。
全ての人々の眼は生き生きしている。職としてではなく趣味の世界をそこに見出しており、いっさい不満が存在しない生を享受しているのだ。
ここは、竜宮城を遥かに凌ぐ≪しのぐ≫、ユートピアそのものである。竜宮城を目指したちっぽ
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