竜宮城に行けた男
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蒸気機関車の基本設計を確立しただけである。千八百四年、リチャード・トレビシックが鉄道史上初めて蒸気機関車を走行させたのだ。
さて、【歴史は、一直線に過去・現在・未来へと進むもの】であると、私は確信している。
あらゆる選択肢が存在して、あらゆる世界を創り出すという多元的世界論――ある有機物の集合が、Aを選択すればAの帰結としての世界が現出するパラレルワールド――を堅く否定している一人である。だから、いかなる理由が存在しようとも【歴史に私の痕跡を残してはいけない】と、信じているのである。
ところで、賢明な皆さんは重大な矛盾に気付かれたことだろう。
そもそも、浦島太郎が七百年後の未来に実体化すれば、彼の体積に相当する空間が弾き飛ばされることになり、当然、玉手箱を抱えた彼はイクスプロージョン(外爆発)により跡形もなくなるはずである。竜宮城より帰ってきた彼が目の当たりにしたものとは――様変わりしている村、先祖を祀る墓石に刻まれていた両親と自分の名だったのだ。挙句の果てに浦島太郎は、精神的に耐えられずに玉手箱を開けたのだ。その瞬間に、彼が存在していた場所から、彼は消え去ったのだ。だから、浦島太郎の体積に相当する大気が入り込むのは必至である。そうなれば、核融合爆発以上のインプロージョン(内爆発)が起きる。したがって、この物語は完結せず後世に伝承されないのではないだろうか?
特殊相対性理論でアインシュタインが唱えた、エネルギー(E) = 質量(m)×『光速度(c)の 二乗』、「物理法則は、すべての慣性系で同一である」という特殊相対性原理から考察した場合。
彼の質量=体重がたとえ五十キログラムであっても、原子爆弾いや水素爆弾を数千個以上も爆発させる威力があるはずだ。
約六千五百万年前、中生代と新生代の境目に直径約十キロメートルの隕石が、メキシコユカタン半島に衝突した。その衝撃波と、粉塵が地球を覆い日光の届く量が激減し寒冷したことにより恐竜やアンモナイトは絶滅したとされる。このような規模の爆発は生命が誕生して以来、何度か発生した大量絶滅の一つに過ぎない。だが、浦島太郎に起因する爆発はそれ以上のパワーがあるだろう、と思える。この疑問を解明することも、私の命を賭した冒険の主な命題ではある。
さて、話を兵庫駅上空にふわふわと浮かぶ私に戻そう。何とかして上下前後に思い通り移動できないものかと様々な試行錯誤をした結果、少しずつではあるが自由に移動するコツをつかめるようになってきたのだ。そこで、北方向の六甲山系に向かって何分か移動すると、前方にパンタグラフを架線に時々シヨートさせながら、ノロノロと進む緑色の路面電車が目に入った。更に近づくと停留所と路面電車の軌道が見えてきた。薬局(薬店?)の前にある停留所で、路面電車を待っている若い女性二人がいる。二
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