0302話『提督の選択』
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うしね。
僕が言えるのはここまでだよ。時間は有限だ。もう一時間はとうに経過しただろう。一日は経過したことになる。決断は急いだ方がいい。
もとの世界に戻るか、それとも艦娘達と一緒にこれからも戦い続けるか……』
そんな、二者択一な選択。酷いにも程がある。
それでもこの少年は私のために色々と考えてくれている事は痛いほど分かった。
でも、もしもとの世界に戻れたとして私はこの世界に来る前までの生活を取り戻せるかどうか。答えはノーだ。
もう一年近く軍人として過ごしてきて染みついた感覚が、艦娘達と過ごしてきた今の私の人格が抜けきらずに生き急ぐ光景をやすやすと思い浮かべられる。
それほどに濃かった生活を送っていたのだ。
だから色々と考えはすれどもう答えは出ているんだ。
それを告げるために私は少年の方へと真っ直ぐに向いて、
『私のために色々と考えてくれてありがとう。でも、もう私は彼女達と一緒に過ごしていくって決めているんだ。
この先どんな辛い事が待ち受けているだろうとみんなが一緒ならきっと乗り越えて行けると思っている。私はそう信じている。だから……』
『わかった……。君の決意はとうの昔に固まっていた事はもう知っていたから今回の話はかなり無粋だったみたいだね』
『すみません……』
『謝らなくていいよ。もともとは僕が君を送り込んだのが原因なんだからね。それじゃこれで最後になるけどもう迷いはないんだね?』
『はい!』
それで少年は満足そうに笑みを浮かべながらも、
『それじゃこれを受け取りなよ』
そう言って少年は一つの丸い玉を投げてきた。
私はそれを受け取ると瞬く間にその玉は私の中へと吸い込まれていった。
『これは……』
『君があの世界で存在していられるだけの十分なエネルギーが込められている宝珠だよ。それでもう君はあの世界で消える事はないだろう。
あ、でもあの工作艦の作った薬はもう飲まない事をお勧めするよ。これ以上は僕も面倒は見切れないからね』
『わかりました』
『そして僕の加護がその宝珠にも込められているからよほどのことがない限りはなんとかなるだろう。それじゃこれで最後も最後、君達のこれからの航海に幸運がありますように……』
少年のその最後の贈る言葉とともに私の意識は薄れていくのであった。
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