第三部 古都にけぶる月の姫
月の姫、降臨
[4/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
龍帝が、斬った?
それを確認した瞬間、抑えきれない殺気が零れる。それを感じ取ったのかこちらに目を向けた赤龍帝に、抜き打ちに一撃浴びせてやる―――
「行くな、文姫」
動き出そうとした私を、残った右腕だけで遮る曹操。
なんで。曹操と同じように、腕切り落としてやらないと気がすまないんだけど。
そんな私の視線を受けて、曹操が懐から小瓶を取り出す。あるなら最初から使おうよ。
そう思いながら曹操の左腕を取り上げ、切断面にくっつける。
曹操が切断面にフェニックスの涙を振りかける。上がった煙に、赤龍帝が驚愕したように目を見開く。
「な、なんでお前がそれを!」
「裏のルートで手に入れた。ルートを確保し、金さえ払えば手に入るものさ。フェニックス家の者はこれが俺たちにまわっているなんて露ほども思ってないだろうけど」
そう。裏ルートを確保してしまえば、案外手に入るものだ。
事実、私たち英雄派は肉体的な強度の面で使用することが多いからよく知っている。
曹操のほうは心配なさそうなので、いざとなれば誰かのフォローに入れるように周囲へ意識を戻す。
―――その時。皮膚に粟を生じるような、凄絶な気配が、突如として現れる。
ぐにゃりと曲がっていった空間。同時に、夜空にかかっていた月が煌々と輝きだし、降り注ぐ月光が力を増す。
私も、曹操も、赤龍帝も。敵味方の全てが、驚いたように天を見上げている。
気配のほうに目を向けてみれば、それはここから少し離れた二の丸の庭園のあたり。
四織たちには見えなかったが、庭園の中では池の水面に映った月が怪しく輝き始める。周囲にいくつもの波紋が連鎖的に生じるのに、水面の月は乱れない。
『―――ああ、面倒だこと。こんな空間まで作ってくれて。これだから神滅具は厄介で、おもしろいのだけれど』
全ての波紋が交差した水面に映る月。
そこを起点に、水面にぽっかりと穴が開き、同時に周囲の空間にビキビキビキッ!と罅が入る。
「ゲオルク!なんだこれは?」
「分からん!だが、何者かが無理やりここに干渉してきているようだ!」
だが。上位神滅具で作った空間すらあっさりと干渉し、こじ開けるなんて並大抵のものにはできるはずがない。
一体何者だ、と警戒心をあらわにする一同の視線の先、空中に現れた亀裂の中から、悠々と人影が進み出てくる。
身にまとう豪奢な十二単。月をバックに背負い、艶やかな黒髪は長く伸び、扇子を広げた姿が妖しい魅力を醸し出している。
人のものとも思えない白皙の美貌は、どこか作り物めいてはいるがやはり美しい。
だが。その姿を視界に収めた瞬間、どくどくと動悸が早くなる。
何、これ……血が、暴れ……?
「……これはこれは。予定はしていない来客があったようだ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ