第三部 古都にけぶる月の姫
月の姫、降臨
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だがいくら走っても、同じ景色しか目に入ってこない。微かに苛立ちながら原因の起点を探すが、それすら見つからない。
こうなったら、最終手段を使うしかないかな……
◆◇◆◇
赤龍帝と対峙した俺は、そのオーラに歓喜しながら、同時に微かに焦りを感じていた。
合流してくるはずの文姫が一向に姿を見せない。
「お前、ヴァーリより強いのか?」
赤龍帝の質問に表面上は平静な―――口の端を吊り上げて肩をすくめる。
「さあ。だが、弱くはないかな。よわっちぃ人間だけど」
その時。俺の言葉を遮るように、着信音が鳴り響いた。
この音楽は、文姫の―――赤龍帝に攻撃されるかもしれないという思考すら無視して、通話ボタンを押す。
「どうした。今、どこにいる」
語気が強くなったのは自覚しているが、同時に不信感もぬぐえない。
いつもなら俺の指示だけは違えない彼女が、今回はなぜ来ないのか。
もしかして、計算違いでもあったか……
『迷子になった』
………は?待て、聞き間違いということもある。もう一度…
「…もう一度聞くぞ。今、どこにいる?」
『だから、迷子になった』
聞き間違いではなかったらしい。いつも通りの淡々とした口調で言い切られた。
全く、世話の焼ける……
「迎えに行くからちょっと大人しくしていろ!」
怒鳴りながら携帯の電源を切る。呆けている赤龍帝を無視し、全員に声をかける。
「文姫を迎えに行ってくる。少しの間だが、任せた」
「待て曹操!君が抜けたら誰が赤龍帝の相手をするんだ!?」
ジークが当然のように問い返してくる。まあ、それでやめる気はないが。
「すぐに戻るから問題ないだろう。任せたぞ」
言い捨てて跳躍し、城壁の上へ上る。
さて、どこに行った……
◆◇◆◇
曹操に電話を叩き切られた。
最後のほう大人しくして色って言っていた気がしたけど……あの、まさかこっち来る気じゃないよね?
優先順位は実験>私なのだから。私のためなんかに大切な実験を放り出すなんてあってはいけないことだ。
そう思いながらも、どこか安堵している私もいて、それが私を戸惑わせる。
とりあえず、指示通りに待ってようと、腰を下ろした。
それから、しばらくして。
「―――見つけた。手間をかけさせてくれるな」
スタッと目の前に降りてきた曹操がため息をつく。それに、どこか安堵の色が漂っていたように感じたのは、願望だろうか。
「ごめん、手間をかけさせて」
「いや、それはいい。君に気がつかせないほどの結界だ、相当の実力者が此処に入り込んでいるな……計算違いにならなければいいが」
そう言って、すっと手を差し伸べてくる曹操。その手を自然につかむと、グイッと引っ張られ
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