第三部 古都にけぶる月の姫
死神
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―――私は、殺戮を愉しむ修羅となろう。
白刃が蒼黒の残光を引く。
上段から振り下ろされた必殺の一閃で、目の前に立ちふさがった狒々の頭から真っ二つにする。迸る血柱を避けながら斬撃の角度を変えて斜め上へと斬り上げる。断ち切られた腕がぼとりと地に堕ち、一瞬で灰と化す。その灰を踏みにじり、一歩踏み込む。
一瞬で二撃。強烈な刺突の二連打が目の前に群がる妖の壁を穿ち、灰に還す。一瞬の静寂、ふっと刀を引き、背中に背負うような恰好にする。背後から突き出されてきた爪が刀身に阻まれ、金属音を響かせ止まる。
すぐさま報復の一太刀。残光を引く蒼黒の刃が閃き、血飛沫が舞う。肉の一片たりとも、魂魄の一欠片すらも残すものか。
遠くから魔力で狙い撃とうとした妖が見える。考える暇もなく反射的に動いた手から刀が飛び、閃光となって妖の喉元に突き刺さり、抉る。
武器を投擲した私の前に殺到する妖異。武器をなくした私を囲んでずたずたにする気だろうけど―――靴に仕込んでいたナイフを取り出す。普段の得物とは違うし、万霊殺しの力が宿るわけでもないけれど、ジークがくれた聖別済みだというナイフだ、問題はないと思う。現にほら、切れ味も申し分ないし。
普段の私が出せるわけのない速さで、身を低くして踏み込む。突っ込みながら下から上へ、斬り上げ両断する。くるりと手の中でナイフを回転させ、背後に切っ先を突き出す。手ごたえあり。狼のような姿の妖の脳天に突き刺さり、苦悶の声とともに沈む。
右に左に閃く刃が片っ端から周囲の妖異を解体していく。ざっと開けた道を走りぬけ、妖の骸から刀を引き抜き、悠然とナイフを元の場所にしまう。
風切り音とともに再開される舞踏のように優雅な殺戮。私の周囲に光の線が引かれるたびに、血飛沫が彩りを添える。腕が、足が、頭が、次々と地に落ちて灰に変わる。
私だって無傷じゃない。爪が、牙が、放たれる妖力が、私を傷つけていく。最小限の動きで、ギリギリのところで躱しているため大体は服の布地が、悪い時には肌に新しい傷が増えていく。
だけど致命傷じゃない。だから止まらない。体が動く限り、目の前の脅威を葬り続ける。
意識が、体の動きが、限界を越えて研ぎ澄まされる。冷えていたはずの頭が血の匂いに飽和した様に焼け付き、痛みを生む。ズキズキと痛みながらも、殺戮を止めることができない。
普段の私を超えた、曹操たち英雄並の身体能力。それに呼応するように増していく頭痛。まるで、相反するものを無理やり一つに押しこめたかのような―――
「……あ、れ?」
気がつけば。いつの間にか百鬼夜行の気配は消え、残っていたのは大量の骸と、腰を抜かしたかのような構成員の姿。なんだかこっちを見て怯えて……なんで手で顔を隠して指の隙間から見ているの?
「―――い、文姫!」
「曹操?」
あ
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