第三部 古都にけぶる月の姫
死神
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ということで先回りしたのだ。構成員もその辺に隠れている。
赤龍帝たちが橋を渡りきったところでゲオルクの『絶霧』で京都を模した疑似フィールドに強制転移をさせる、という手はずになっている。上手くいくといいのだけれど。
周囲に視線を配っていると、予定通り赤龍帝たちが見えた。構成員に合図をして、その場から一度離れる。曹操曰く、この辺をまとめて転移させるらしいから少しくらいなら離れていても大丈夫だろう。よくよく見れば堕天使総督の姿も見えるし、ここにいたままだと感知されないとも限らない。そうすれば計画が意味のないものになってしまう。
気息を整え、しばし待つ。しばらくすると、足元に霧が立ち込める。さあ、いよいよ―――
『……あなたたちはこっちよ』
◆◇◆◇
「無事に赤龍帝たちは招待できたようだな」
「……曹操。文姫の気配が感じられない。あと、あれは文姫につけておいたメンバーじゃないかな?」
「……………何?まさか、ゲオルクの転移に誰か干渉したとでもいうのか?」
「可能性はありそうだけど……今は確かめに行けないね」
「…………そうだな……クソッ」
◆◇◆◇
「……?」
おかしい。転移されたはずなのに、曹操たちや赤龍帝たちの姿が見えない。
周りにいた構成員も二人だけになっている。五人はいたんだけど……どうして?
そんな疑問も、すぐに吹き飛ぶ。これは―――――久方ぶりに感じる、最高純度の殺意。
「下がって」
ここまでの殺意を放つ相手だ。単独であれ、複数であれ、護りきれる自信はない。
そういう意味で言ったのだが、構成員たちは聞く気はなさそうで、武器を構えている。顔に浮かんでいる嫌悪感から、私の指示など聞きたくもないらしい。なら知らない。勝手にやればいい。
きゃらきゃらきゃら
空間全てから響くようにあちこちの方向から声が聞こえる。明らかに人とは異なる、人外の声。吹き上がる生温い風が頬を撫でる。同時に笑い声のような高い声が大きくなる。そっと抜刀した私の前に、影が奔る。
「!」
咄嗟に体を反らす。同時にヒュッと風切り音が耳に届き、ちぎれた布地が宙を舞う。
鋭い爪のような何かがかすめたようだ。瞳を細めて前方の空間を睨む。猿に似た巨大な体躯―――狒々だろうか。
気配を研ぎ澄ますと、空間のあちこちに気配を感じる。きゃらきゃらという笑い声が大きくなるごとに、気配が色濃く、重くなっていく。
「……百鬼夜行、そのもの?」
だとすると、物量戦ではあっちが完全に上だ。
思考と同時、体が反射的に動く。そこら中から腕が、足が、爪が、伸びてくる。どこにも安全な場所なんてな―――
「下がって!」
一閃、構成員を狙った腕を断ち切る。勝手にし
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