第三部 古都にけぶる月の姫
京都入り
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……首輪代わりだ」
小さく笑ってリングをいじりながら何か最後にボソッとつぶやく。
聞こえてないと思ってるんだろうけど、しっかり聞こえているからね?
「私、ペットじゃないから首輪なんていらないよ」
「なに、君が俺のモノという証拠という意味での首輪だ。つけておけ」
「むぅ……」
反論してもさらりとかわされる。でもここで無理やり返せば、曹操の気分を害するかもしれない。それは私の本意じゃないから、ここは受け取っておいたほうがいいのだろうけど……そこまで見透かしてこんなことをしたのだとしたら、ずるいと思う。
そんなことを思いながら、曹操の解説に耳を傾けるのだった。
◆◇◆◇
裏京都と呼ばれる地の一角に、ふわりと気配が舞い降りる。
そこは常夜の国。裏京都の中でもひときわ異質な、とある人物が治める「領地」だ。
当該人物は今、庭に出て自らの作りだした夜空を見上げている。
「姫」
舞い降りた鴉天狗は膝をつき、首を垂れる。目の前にいる存在に最上級の礼を示すために。
その声に主は振り返る。その仕草に促されるように、鴉天狗は口を開く。
「―――姫の血族は、やはりこの地に」
「………そう」
物憂げな、気だるげな声とともにさらりと黒髪が揺れる。
「ならば、貴方に支度を任せるわ。いずれ害となるならば、間引かねばならないでしょうし。ああ、できなかったら私が出ていくだけだから、安心してくれっていいわよ?」
「はっ」
気配は消える。再び一人となった「姫」は、静かに天を仰ぐ。
その視線の先にあるのは、欠けることなき満月。
「―――さあ、舞台に上がってきなさい?英雄を騙る少年少女。そして―――私の、可愛い可愛い、末裔」
その笑みを、月だけが見届けていた。
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