第三部 古都にけぶる月の姫
京都入り
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とりあえずと差し出された腕をつかんで移動を開始した。
ガタガタと揺れるバスに詰め込まれた私たちは、座席が埋まっていたので立っていた。こういう交通機関使わないでもいいじゃないかと言ったら「一般人に見られたらどうするつもりだ」と返された。おっしゃる通りです。
そんなわけでバスに乗って移動しているのだが、今回は失敗だったかもしれない。観光客や学生が大勢乗ってきて、曹操と二人で立つことになってしまった。おまけにバスのほうも結構ぎりぎりまで乗車させているらしく、密度が高い。おかげで曹操にくっつかざるを得ない。
「ご、ごめん…」
「気にするな」
バスが急に動き、曹操にもたれ掛かる形になってしまう。息がかかってしまうくらいの距離まで近づいてしまえば、意識するまでもなく心拍数は上がってしまう。私にだって、羞恥心くらいはあるのだから。それにこれで恋人と誤解されると、曹操に悪い気がする。
いろいろあったものの、無事に目的地に着いたバスから降りて深呼吸する。確かここは…清水寺だっけ?と言っても、まだ寺は見えないけど……
「こっちだ」
曹操に引っ張られるように歩く。道順も知らないのでその誘導におとなしく従うことにする。
両脇に様々なお店が並んでいる。いつだったか曹操と行ったお祭りを思い出すような気がする。人の多さは比べ物にならないけど…。目につく限りは、学生服が多い気がする。
お土産屋さんが結構あるけど、アクセサリーが多い…。展示してあったアクセサリーに少し興味をひかれたので腕を引っ張ると、察したようにこちらに主導権を渡してくれる。
シンプルなシルバーのアクセサリーだ。丁度、今曹操が身に着けているのと同じようなもの。私がちょっと気になったのはシルバーのリングだった。デザインが好みだったので。だけどこれだと、私失くしちゃいそうだ。リングを手にとってジーと眺めている私を曹操が眺めている。きっと、こういうものに興味を示す私が新鮮なのだろう。基本的におしゃれとかに気を使わない性質だから。
と、ひょいっと手が伸びてきて手にしていたリングを取られる。
「?」
そのまま引っ張られてカウンターまで。え、何?買う気なの?私欲しいとは言ってないんだけど?
そのまま会計を済ませた曹操が、何を思ったか自分のつけていたネックレスに指輪をつけ始める。あ、自分がほしかっただけ?
なんて思っていると、ふわりと曹操の手が動く。そして、胸元のあたりからチャリ、と金属音が。
慌ててそちらのほうに視線を向けると、曹操のものであるはずのネックレスが私の首にかかっている。先ほど購入したリングも揺れているそれを見て、私はひたすらに困惑しきりだった。え、あれ?これ、曹操のものじゃ…。
「曹操、これ……」
「これならつけていられるし、無くさないだろう
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